アンリ・ソーゲ

アンリ・ソーゲ（Henri Sauguet, 1901年5月18日 - 1989年6月22日）は、20世紀フランスを代表する作曲家の一人です。本名はアンリ＝ピエール・プパール（Henri-Pierre Poupart）ですが、母の旧姓を筆名として用いました。彼の音楽は、バレエ音楽を中心に、オペラ、交響曲、協奏曲、映画音楽など多岐にわたります。

生い立ちと音楽への目覚め

ソーゲは5歳から母親の手ほどきでピアノを始め、その後、ボルドーのサント＝ウラリー教会のオルガニスト、ルロー夫人に師事しました。この時期、教会音楽やオルガン曲に触れたことが、彼の音楽観形成に大きな影響を与えました。1919年から1920年までモントーバンに勤務した際には、作曲家で『オーヴェルニュの歌』の収集者として知られるジョゼフ・カントルーブと親交を結びました。

グループ活動とパリへの進出

ボルドーに戻ったソーゲは、ルイ・エミエ、ジャン＝マルセル・リゾットと共に「三人組」（Groupe des Trois）を結成し、1920年12月12日に初の演奏会を開催しました。この演奏会では、「フランス六人組」やエリック・サティの作品に続き、彼ら自身の作品も演奏され、ソーゲは自作の『黒人の踊り』と『ピアノのためのパストラル』を披露しました。1921年10月には、ダリユス・ミヨーの勧めでパリへ移り、ギメ美術館に勤務しながらシャルル・ケクランに師事しました。1923年には、アンリ・ポール＝プレイエル、ロジェ・デゾルミエール、マクシム・ジャコブらと共に「アルクイユ楽派」（Ecole d'Arcueil）を結成し、エリック・サティの支持を得て、同年10月25日にシャンゼリゼ劇場で最初の演奏会を行いました。

バレエ音楽家としての活躍

ソーゲは特にバレエ音楽の作曲家として知られており、数多くの作品を残しました。1927年に作曲したバレエ『牝猫』は、ジョージ・バランシンの振り付けでバレエ・リュスによって上演され、セルジュ・リファールとオリガ・スペシフツェワが主演を務めました。彼の最も有名なバレエ音楽は、1945年にローラン・プティのバレエ団のために作曲した『旅芸人』です。また、スタンダールの小説『パルムの僧院』を基にしたオペラや映画音楽も手がけ、幅広いジャンルで活躍しました。

作風と音楽的特徴

ソーゲの作風は、友人であったサティ、プーランク、ミヨーらの影響を受けつつも、独自の音楽性を追求しました。軽快で親しみやすい旋律や、洗練された和声感覚が特徴です。一方で、交響曲第1番のように、より真剣で大規模な管弦楽作品も作曲しており、その第3楽章にはショスタコーヴィチの影響が見られます。彼は、長年にわたり舞台美術家のジャック・デュポンと愛人関係にあり、デュポンの死後に作曲された弦楽四重奏曲第3番には、その悲しみが表れています。1974年には、ミヨーの死後、彼の後任として芸術アカデミー会員に選出されました。

その後と遺産

1989年、ソーゲはパリで亡くなり、モンマルトル墓地のデュポンと同じ墓に埋葬されました。彼の作品は、20世紀フランスの音楽史において重要な位置を占めており、現在でも多くの演奏家によって演奏され続けています。

主要作品

歌劇
コントラバス（1930年）
パルムの僧院（1939年初演）
マリアンヌの気まぐれ（1954年）

バレエ
牝猫（1927年）
ダヴィデ（1928年）
夜（1929年）
レ・ミラージュ（1943年）
旅芸人（1945年）
四季（1951年）
椿姫（1957年）
パリ（1964年）

交響曲
山の交響曲（1944年）
贖罪交響曲（交響曲第1番）（1945年）
寓話交響曲『四季』（交響曲第2番）（1949年）
交響曲第3番『I.N.R.』（1955年）
交響曲第4番『第3世代』（1971年）

管弦楽曲
水夫の踊り（1923年）
組曲『パリの風景』（1950年）
3つのユリ（1954年）
交響的行進曲（1966年）
9月（1986年）
カンプラの主題による変奏曲（1952年）

協奏曲・協奏的作品
ピアノ協奏曲第1番（1934年）
ピアノ協奏曲第2番（1948年）
ピアノ協奏曲第3番（1961年 - 1963年）
ヴァイオリン協奏曲（1953年）
協奏的メロディ（1963年）
庭の協奏曲（1970年）
* 木漏れ日（1979年）

もう一度検索