アーチボルド・キャンベル (初代アーガイル侯爵)

アーガイル侯爵アーチボルド・キャンベル：清教徒革命期のスコットランド貴族の生涯

アーチボルド・キャンベル（1607年-1661年）は、17世紀のスコットランドを揺るがした清教徒革命期において、最も重要な人物の一人と言えるでしょう。初代アーガイル侯爵にして第8代アーガイル伯爵の称号を有した彼は、複雑な政治的立場を繰り返し変え、その生涯は劇的な出来事の連続でした。国民盟約から王政復古まで、スコットランドとイングランドの運命を大きく左右した彼の生き様を、詳細に見ていきましょう。

初期の人生と国民盟約

1607年、アーチボルド・キャンベルは、第7代アーガイル伯爵とモートン伯爵の娘アグネスとの間に生まれました。1638年、父の後を継いで第8代アーガイル伯爵となり、スコットランドの政治の中枢に身を置くことになります。当時、イングランド王チャールズ1世は、スコットランド国教会にイングランド国教会の監督制を押し付けようとしていました。この政策に激しく反発したアーガイル伯爵は、モントローズ伯ジェイムズ・グラハムやアレクサンダー・レズリーらと共に国民盟約を結成。長老派教会の堅持を掲げ、国王と対立する立場をとります。1641年には、チャールズ1世との和解工作の一環として侯爵位を授与されています。しかし、国民盟約内での盟友であるモントローズ伯とは、方針を巡って対立、組織の結束を弱めてしまうことになります。

イギリス内戦における複雑な立場

第一次イングランド内戦（1642年-1646年）が始まると、アーガイル侯爵は当初議会派を支持する姿勢を示しました。しかしながら、国王チャールズ1世に対しては、スコッツガーズという連隊を派遣するなど、一貫性のない行動が目立ちます。彼の政治姿勢は、常に自らの勢力拡大を優先したものだったと言えるでしょう。1643年には、議会派の指導者ジョン・ピムやヘンリー・ベインらと「厳粛な同盟と契約」を締結し、スコットランド軍をイングランドに派遣します。しかし、この同盟は、宗教や文化など様々な相違点を棚上げして結ばれたため、第一次内戦後にはイングランドとスコットランドの関係悪化を招きました。これを好機と見たハミルトン公ジェイムズ・ハミルトンは、チャールズ1世と和解しエンゲージャーズを結成、第二次イングランド内戦（1648年）の勃発に繋がります。

ところが、ハミルトン公がクロムウェル率いる議会軍に敗北すると、アーガイル侯爵は急遽クロムウェルと和睦し、ハミルトン派を排除します。しかし、独立派に属するクロムウェルとの共存は不安定でした。1649年、チャールズ1世処刑に反対し、共和国に敵対、王党派に転じチャールズ2世を支持して第三次イングランド内戦へと突き進んで行きます。

モントローズ伯との対立とスコットランド支配

アーガイル侯爵は、モントローズ伯ともスコットランド内戦で激しく対立しました。当初は幾度もモントローズ伯に敗北しますが、第一次内戦終結間近に状況は逆転。1645年、フィリップホフの戦いでモントローズ伯を破り、彼を亡命に追い込みました。これにより、スコットランドにおけるアーガイル侯爵の支配は確固たるものとなります。1650年には、チャールズ2世支持を表明したモントローズ伯を再び破り、処刑に追い込みました。

クロムウェルの侵攻と王政復古

しかし、クロムウェル率いる共和国軍の侵攻は避けられませんでした。ダンバーの戦いでの敗北後、アーガイル侯爵はチャールズ2世の戴冠式を挙行するも、ウスターの戦いでの敗北によりチャールズ2世は亡命、スコットランドは共和国軍に制圧されます。アーガイル侯爵は降伏し、スコットランドはイングランドと合同して共和国の支配下に置かれました。

1658年にはスコットランド選出議員となりますが、1660年の王政復古後、共和国時代の行動を反逆罪として告発され、1661年4月27日、処刑されました。皮肉なことに、彼の敵であったモントローズ伯は、王政復古後、英雄として国葬が執り行われ、セント・ジャイルズ大聖堂に埋葬されています。アーガイル侯爵もまた、同大聖堂に葬られています。

アーガイル侯爵の死後、彼の爵位と所領は没収されましたが、息子のアーチボルドによって1663年に回復されました。アーガイル侯爵の生涯は、清教徒革命期のスコットランドの政治的混乱を象徴するものであり、その複雑な立場と劇的な最期は、今も人々の記憶に刻まれています。

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