ジョン・ピム

生涯

ジョン・ピム（John Pym, 1584年 5月20日 - 1643年 12月8日）は、17世紀イングランドの政治家であり、清教徒革命（イングランド内戦）初期において、その指導的な役割を担った人物の一人です。

生い立ちと初期の活動

サマセットシャーのジェントリであるアレクサンダー・ピムとフェリッペ夫妻の息子として生まれました。幼くして父を亡くし、敬虔なピューリタンであった継父アンソニー・ラウスによって育てられました。1599年にオックスフォード大学に入学し、3年後の1602年にはミドル・テンプル法曹院に進んでいます。学生時代に発生した火薬陰謀事件は、ピムの反カトリック感情を強くしました。

ベッドフォード伯爵フランシス・ラッセルとの親交を通じて、1605年に王領収入役の職を得て富裕となり、財政知識と地方政治の経験を積みました。1614年に庶民院議員に選出され、1621年にも再選されています。収入役時代には義姉の娘アン・フックと結婚し、7人の子をもうけましたが、1620年に妻、母、義兄を相次いで失っています。

1621年の議会では、カトリックへの弾圧を支持し、ジェームズ1世に対し、忠誠と引き換えにイングランド人の権利を保障するよう求めました。エドワード・コークらと共に「議会の大抗議」を作成しましたが、ジェームズ1世の怒りを買い、議会は解散。ピムは軟禁状態に置かれましたが、その能力が買われ、収入役の職は罷免されませんでした。その後も政治活動を続け、1624年と1625年の議会でも、反カトリック、反アルミニウス主義、イングランド国教会擁護を主張し続けました。

国王専制への批判

チャールズ1世の時代に入ると、バッキンガム公ジョージ・ヴィリアーズの弾劾を主導し、反国王派として注目を集めるようになります。1628年には、ジョン・エリオットらと共に「権利の請願」の作成・提出に尽力しました。しかし、1629年にチャールズ1世が議会を解散し、無議会状態になると、ピムはプロヴィデンス島会社の収入役に就任します。この会社は表向きは植民地建設のためのものでしたが、実際には反国王派の保護を目的としていました。ジョン・ハムデン、ウォリック伯ロバート・リッチ、ブルック男爵ロバート・グレヴィル、セイ＝シール子爵ウィリアム・ファインズらが株主に名を連ねており、会社が倒産した後も彼らは連携を保ちました。また、エリオットが獄死し、コークも亡くなった後、ピムはハムデンと共に庶民院の指導者として政府を批判するようになりました。

1640年4月の短期議会では、チャールズ1世に対して無議会政治を非難し、人民の政治的権利の保障を要求。11月からの長期議会では、王妃ヘンリエッタ・マリア、カンタベリー大主教ウィリアム・ロード、ストラフォード伯爵トマス・ウェントワースらの糾弾を主導しました。ストラフォード伯は後に処刑されます。また、無議会政治下でチャールズ1世が濫用した大権と、その執行機関の廃止に尽力しました。1641年にはトン税・ポンド税・船舶税の禁止、星室庁・高等宗務官裁判所の廃止、3年に1回の議会召集などを定め、王権に制限を加えました。これらの改革は、後のイギリスの近代国家への発展の基礎となりました。

チャールズ1世は、スコットランドにおける主教戦争にピムらが関与したと非難し、孤立化を図ります。アイルランドでの反乱発生が、ピムを苦境に陥れましたが、ピムは「議会の大諫奏（大抗議文）」を議会で可決させ、対抗しました。この大抗議文は、わずか11票差という僅差で議会を通過しました。

1642年 1月3日、チャールズ1世はピムやハムデンら5人の庶民院議員の逮捕を貴族院に要請しましたが、失敗に終わります。5人は議会に登院してチャールズ1世を挑発し、チャールズ1世が自ら兵を率いて庶民院に乗り込む事態となりました。しかし、5人は事前にロンドンに逃れており、ロンドン市民はチャールズ1世の要求を拒否。チャールズ1世はロンドンを脱出し、5人は議会に復帰しました。これにより、議会派と王党派は戦争へと進み、8月に第一次イングランド内戦が始まりました。議会派内部も大抗議文を巡って分裂し、ピムらの急進派は独立派に、穏健派は長老派へと分かれました。

内戦下の議会を主導

内戦勃発後、ピムは議会派の財務担当として、民兵と新税の必要性を説き、オリバー・クロムウェルら各地の有力な指揮官を議会側に取り込みました。議会に対しては指導力を発揮し、穏健派との分裂を避けるため、国王との和睦交渉を支持しながら、戦争遂行に必要な財政基盤を確立しました。

1643年3月には、王党派の財産没収を立法化し、カトリックの脅威を煽り、各州の財産評価や課税、消費税を導入して、議会の財政基盤を固めました。この税制は王政復古後も継続し、近代イギリスを支えるシステムとなりました。また、スコットランドとの同盟交渉にも成功し、「厳粛な同盟と契約」を締結しました。この際、全てのイングランド人に議会への忠誠を誓約させ、国民大衆の団結を求めました。

しかし、ピムはすでに癌に侵されており、1643年 12月8日に逝去しました。彼の死後、ヘンリー・ベイン、オリバー・シンジョン、クロムウェルらが政治と軍事を引き継ぎましたが、内戦に勝利するとクロムウェルが台頭し、新たな指導者として君臨していくことになりました。

ピムの活動は、イングランドにおける議会政治の基礎を築き、後の近代国家へと繋がる重要な一歩となりました。

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