イギリス領ホンジュラス

イギリス領ホンジュラス：中央アメリカのイギリス植民地

イギリス領ホンジュラスは、1783年から1964年まで中央アメリカ東岸に存在したイギリスの直轄植民地です。現在のベリーズに相当し、メキシコの南に位置していました。1964年に自治権を獲得し、1973年にベリーズへと改名。1981年にイギリスから完全な独立を果たしました。アメリカ大陸における最後のイギリス植民地としても知られています。

歴史的背景

植民地の起源は、スペインがイギリスに対し、現在のベリーズにあたる地域で丸太を切り出す権利を認めたヴェルサイユ条約に遡ります。その後、ロンドン条約によって領域が拡大されました。1862年には、ホンジュラス湾のベリーズ開拓地がイギリス領ホンジュラスとされ、行政長官はジャマイカ総督の subordinate になりました。

脱植民地化とグアテマラとの国境紛争

独立に向けて、イギリス領ホンジュラスは2つの大きな障害に直面しました。一つは、1960年代初頭まで自治に消極的だったイギリスの姿勢。もう一つは、長年にわたり領土全体の領有権を主張し続けたグアテマラとの国境紛争です。

1961年、イギリスは独立を認めましたが、国防、外交、国内安全保障などの分野は引き続き管理下に置きました。1973年6月1日、独立への期待を込めて植民地名はベリーズに変更されました。しかし、ベリーズの将来に関するイギリスとグアテマラ間の交渉は行き詰まり、ベリーズは国際社会の支援を求めることになります。1981年の完全独立後も、領土問題は未解決のままでした。

この領土問題は、18世紀の条約に端を発します。イギリスがスペインの主権を認めつつも、入植者が不明確な境界の地域を占拠し続けたことが原因です。グアテマラは、1859年に締結されたイギリス・グアテマラ条約を根拠に領有権を主張しました。グアテマラ側は、この条約はグアテマラからカリブ海沿岸への道路建設を条件に領有権を放棄するものだと解釈。イギリスが道路を建設しなかったため、条約は破棄されたと主張しました。1945年には、グアテマラの憲法でイギリス領ホンジュラスをグアテマラの県とみなす条項が盛り込まれました。

1960年代には、アメリカの調停によりグアテマラに新たな独立国の支配権を与える条約案が提示されましたが、イギリス領ホンジュラスの各政党から非難を受けました。1970年代には、グアテマラの侵攻の可能性をめぐって緊張が高まりましたが、ベリーズ政府とイギリス政府は国際フォーラムで自決を主張し、非同盟諸国の支持を取り付けました。その結果、国連は1981年の会合で、ベリーズの独立を求める決議を可決しました。

独立直前の1981年3月には、グアテマラとの合意を目指した主張協定が提案されましたが、グアテマラ政府が批准を拒否し、ベリーズ国内では反対デモが発生しました。

経済

イギリス領ホンジュラスの経済は、主に林業に依存していました。当初は染料に使われる丸太が中心でしたが、18世紀後半にはマホガニーの伐採へと移行し、20世紀半ばまで経済の中心的な役割を果たしました。マホガニーの伐採は労働集約的であり、アフリカからの奴隷輸入が大幅に増加しました。過酷な労働条件から奴隷反乱も頻発しましたが、1838年に奴隷制は廃止されました。その後もマホガニーの輸出が経済の中心でしたが、1860年代にはアメリカ南部からの入植者が砂糖生産を導入し、新たな産業が発展しました。

しかし、経済の多様化が進まなかったため、植民地はマホガニーの市況に大きく左右されることになります。1930年代の世界恐慌とハリケーンによって経済はさらに悪化し、生活水準は低迷しました。1950年代には農業が、1970年代には漁業が経済の中心となり、第二次世界大戦後の農地改革が経済拡大を後押ししました。

人口統計

1790年の国勢調査によると、イギリス領ホンジュラスの人口の4分の3は「クリオーリョ」と呼ばれる混血の人々でした。彼らは、ヨーロッパ人男性と奴隷化されたアフリカ人女性の混血であり、現代のベリーズ・クリオーリョの祖先です。人口の最大部分はメスティーソで、現代のベリーズの約50％を占めています。マヤ人もベリーズに存在し、人口の約11％を占めています。

植民地の人口は常に少なく、1790年には約4,000人、1856年には2万人と推定されました。1931年には5万人強、1946年には6万人弱に増加し、1970年には12万人弱と倍増しました。1980年の独立前夜には、14万5千人を超えていました。

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