イザヴェル

イザヴェル (Iðavöllr) は、北欧神話において極めて重要な場所として登場します。様々な名称で呼ばれ、古ノルド語ではIðavöllr、英語ではIdavoll、ドイツ語ではIdafeldなど複数の表記が存在します。

この地は、アースガルズ（神々の世界）が創造された場所とされています。『古エッダ』の『巫女の予言』では、アース神族がイザヴェルに集結し、神聖な祭壇や神殿を建設し、鍛冶場で黄金を加工して様々な道具を作り上げた様子が描写されています。神々が共同で活動し、創造と繁栄の象徴として描かれていることがわかります。

『巫女の予言』と『スノッリのエッダ』第一部『ギュルヴィたぶらかし』では、終末イベントであるラグナロクの後、生き残ったアース神族が再びイザヴェルに集まる様子が記されています。彼らは、かつての戦いやヨルムンガンド（世界蛇）との戦い、そしてオーディン神を始めとする死んだ神々を偲びます。ラグナロクの悲劇を乗り越えた神々が、イザヴェルで新たな時代への希望を見出す様子が描かれていると言えるでしょう。さらに、神々が使用していた黄金製の将棋が草の中で発見されるという記述もあります。これは、過去の栄光と新たな始まりを象徴する象徴的な描写と言えるでしょう。

イザヴェルという地名は、その意味について複数の解釈が存在します。ドイツの研究者ミュレンホフは「休みない活動の場」と解釈し、オランダの研究者デ・フリースは「輝く野」と解釈しています。これらの解釈は、イザヴェルの神聖さや活動の盛んな様子を表していると言えるでしょう。いずれにしても、イザヴェルは単なる地理的な場所ではなく、神話の重要な舞台、神々の活動の中心地、そして新たな時代の幕開けを告げる場所として位置づけられています。

そして、イザヴェルから新たな時代が始まる場所として、ギムレーという地が言及されています。ギムレーは、ラグナロク後の世界における新たな創造や再生の場所と考えられています。イザヴェルとギムレーの関係は、破壊と創造、終末と再生という北欧神話における重要なテーマを象徴していると言えます。

『古エッダ』や『スノッリのエッダ』といった文献から、イザヴェルは北欧神話における中心的な場所であり、神々の活動やラグナロク、そして新たな時代への希望が象徴的に描かれた場所であることがわかります。その名称や意味についての解釈は様々ですが、いずれもイザヴェルの神聖さと重要性を示すものです。北欧神話を理解する上で、イザヴェルは欠かせない要素と言えるでしょう。

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