イズニク

イズニク：歴史と文化が織りなす古都

イズニク（İznik）は、トルコ北西部のブルサ県に位置する都市で、古代にはニカイアとして知られていました。イズニク湖の東岸に位置し、その歴史は古く、紀元前4世紀にまで遡ります。

古代から中世へ

ニカイアは、ヘレニズム時代に建設され、マケドニア、ビチュニア、ローマ、ビザンツといった様々な勢力の支配下に置かれました。1077年にはセルジューク朝によって征服され、ルーム・セルジューク朝の最初の首都となりました。その後、1097年には十字軍の支援を受けたビザンツ帝国が奪還。13世紀には、コンスタンティノポリスが十字軍に占領された際、ビザンツ帝国の亡命政権であるニカイア帝国が置かれました。

ニカイア帝国がコンスタンティノポリスを奪還してビザンツ帝国を再興した後、ニカイアは再び地方都市となりました。しかし、1331年にオスマン帝国に占領され、イスラム教徒の支配下に入りました。1333年には、イズニクで最初のモスクとされるハジュ・オズベク・モスクが建設されました。これは、オスマン帝国時代に建設されたモスクの中でも現存する最古のものの一つとされています。

オスマン帝国時代の繁栄

オスマン帝国初期、イズニクは近隣のブルサと並んで重要な都市でした。15世紀以前には、ムラト1世の宰相チャンダルル・カラ・ハリルによって建設されたイェシル・モスクや、博物館として利用されているニルフェル・ハトゥンの救貧施設など、多くの重要な建築物が建てられました。1453年にコンスタンティノポリス（現在のイスタンブール）がオスマン帝国に征服されると、イズニクの政治的な重要性は低下しましたが、文化の中心地としての役割は引き続き維持され、多くの知識人や詩人が輩出されました。

イズニク陶器：その栄光と衰退

イズニクが歴史に名を残したのは、何と言ってもイズニク陶器の生産地としての役割でしょう。14世紀頃から始まったとされるイズニク陶器は、白い化粧土を下地に着色し、透明な釉薬をかけて焼き上げる技法で作られました。当初は、モンゴル帝国を通じて西アジアに流入した中国の染付陶器の影響を受け、コバルトブルーを基調とした模様が描かれていましたが、15世紀以降はターコイズブルー、緑、紫、赤といった多色の着彩が行われるようになり、独自の発展を遂げました。

16世紀には最盛期を迎え、様式化された植物模様や花の模様が描かれたイズニク陶器は、イスタンブールを中心とするオスマン帝国宮廷社会で愛されました。トプカプ宮殿をはじめ、イスタンブールに建設された宮殿やモスクは、イズニク製のタイルで美しく飾られ、都市の景観に彩りを添えました。

しかし、17世紀後半以降、イズニクの陶器生産は衰退し、18世紀には主要な生産地としての地位をキュタヒヤに譲りました。オスマン帝国末期からトルコ共和国初期には、人口も1万人を割り込み、目立たない地方都市となっていきました。

現代のイズニク

20世紀後半に入ると、トルコ全体の人口増加に伴い、イズニクの人口も徐々に増加しました。近年では、地元の若い陶芸家たちが、新しいイズニク陶器を創り出す運動を試みており、再びその名が注目されています。

イズニクは、歴史と文化が息づく魅力的な都市であり、古代から現代に至るまでの多様な遺産が訪れる人々を魅了します。その美しい陶器は、今もなお、世界中で多くの人々に愛されています。

関連事項

ニカイア
リュステム・パシャ・モスク - 内装に膨大なイズニックタイルが使用されていることで知られる、イスタンブールのモスク

外部リンク

イズニック財団
イズニク陶器の例

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