イテリメン族

イテリメン族：カムチャツカ半島の先住民

イテリメン族は、ロシア連邦極東に位置するカムチャツカ半島に暮らす先住民族です。かつては「カムチャダール族」とも呼ばれていましたが、これは20世紀頃までの呼称で、イテリメン自身は自らをイテリメンと称しています。17世紀末のロシアによるカムチャツカ半島併合以降、ロシア文化の影響を受けながらも、独自の文化と生活様式を維持し続けてきました。

生業と伝統文化

イテリメン族の伝統的な生業は、漁労と狩猟です。豊かな河川資源と海洋資源を利用し、季節によって居住地を移動する生活を送っていました。河川流域や沿岸部には、竪穴住居や小規模な家屋を構え、移動手段としては犬ぞり、かんじき、スキーなどを活用していました。水上移動には丸木舟を利用していました。

彼らの文化は、近隣のチュクチ族やコリヤーク族と共通点が多く見られます。シャーマニズム信仰や、ワタリガラスを題材とした神話などがその例です。イテリメン語（カムチャダール語）は古シベリア諸語に属し、現在ではロシア語とともに使用されています。ソビエト時代にはコルホーズ（集団農場）に属し、漁業、狩猟に加え、園芸にも従事していました。

アイヌとの交易

18世紀前半までは、樺太、北海道、千島列島に居住するアイヌ民族と盛んな交易を行っていました。カムチャツカ半島南部では、アイヌが捕獲したサケやラッコの毛皮などの貴重な産物が、イテリメンとの間で取引されていました。この交易においては、物々交換が基本でしたが、当時使用されていた決済通貨なども、現在、観光客向けに展示されています。

観光産業と文化の継承

現在、カムチャツカ半島は火山や温泉が豊富な観光地として世界的に知られており、イテリメン族の文化も観光資源として注目されています。イテリメンの居住地では、伝統的な民族舞踊（収穫への感謝の踊りなど）が披露され、歴史を伝える品々が展示されています。これらの展示を通して、イテリメン族の豊かな文化とアイヌとの交易の歴史が伝えられています。

遺伝子学的特徴

イテリメン族のY染色体ハプログループの分析によると、ハプログループC2が38.9～66.7％と高頻度で出現し、次いでハプログループR1aが22.2％を占めています。ハプログループR1aはロシア人に高頻度に見られることから、ロシア人との混血が示唆されています。

まとめ

イテリメン族は、カムチャツカ半島の厳しい自然環境の中で独自の文化を築き、近隣民族との交流を通して発展してきました。現代では、観光産業を通して独自の文化を継承し、世界に発信しています。彼らの歴史と文化は、カムチャツカ半島の自然と深く結びついており、今後もその豊かな文化が大切に保存・継承されていくことが望まれます。

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