イフ・アイ・ワー・ア・カーペンター〜カーペンターズに捧ぐ

『イフ・アイ・ワー・ア・カーペンター〜カーペンターズに捧ぐ』（原題: If I Were a Carpenter）は、1994年にA&Mレコードからリリースされたカーペンターズのトリビュート・アルバムです。このアルバムには、アメリカを中心に14組のアーティストが参加し、オルタナティヴ・ロックの視点からカーペンターズの名曲が新たな解釈でカヴァーされています。

アーティストとして名前が挙がるのは、少年ナイフやクランベリーズ、オランダのベティー・サーヴァートなど国内外で活躍するアーティストたちです。これにより、カーペンターズの楽曲が国を超えて、多様な音楽的アプローチで表現されることとなりました。音楽業界でのカーペンターズの影響力の大きさと、彼らの楽曲が持つ普遍性が、さまざまなアーティストによって証明された形です。

A&MレコードのA&RであるLarry Hambyはこのアルバムについて、カレンの歌声にはハッピーな曲調であってもどこか悲しげな感情が宿っており、参加したオルタナティヴ系アーティストたちはその本質を理解しているとコメントしています。このような感情を織り込むことで、元々の楽曲の魅力が新たな解釈によって引き出され、多くの聴き手に感動を与えることができるのです。

特に注目すべきは、マシュー・スウィートがカヴァーした「あなたの影になりたい」で、元々の楽曲の雰囲気を保ちながら、新しい息吹を吹き込んでいます。このトラックにはリチャード・カーペンターがエレクトリックピアノとコーラスで参加しており、彼自身の声を通じて、カーペンターズの魔法が再現されています。このエピソードはアルバム全体においても、原曲へのオマージュとしての役割を果たしています。

音楽評論家のStephen Cookは本作を「非常に幅広くオリジナリティのある解釈が印象的」と評し、聴き手はこのアルバムを通じてカーペンターズの見過ごされていた作曲の才能を再発見できるだろうと述べています。また、「ポスト・パンクに理解のあるカーペンターズ・ファンは必携」との言葉が、このアルバムの独特な価値を強調しています。

収録曲

アルバムには全14曲が収録されており、これらの楽曲は多様なアーティストによって新たに生まれ変わっています。以下は収録曲の一覧です：

- 愛にさようならを - Goodbye to Love （アメリカン・ミュージック・クラブ） - 3:12
- トップ・オブ・ザ・ワールド - Top of the World（少年ナイフ） - 3:55
- スーパースター - Superstar（ソニック・ユース） - 4:06
- 遙かなる影 - (They Long to Be) Close to You（クランベリーズ） - 2:40
- ふたりの誓い - For All We Know（ベティー・サーヴァート） - 3:27
- 小さな愛の願い - It's Going to Take Some Time（ディッシュワラ） - 4:16
- ソリテアー - Solitaire（シェリル・クロウ） - 4:43
- ハーティング・イーチ・アザー - Hurting Each Other（ジョネット・ナポリターノ & マーク・モアランド） - 4:09
- イエスタデイ・ワンス・モア - Yesterday Once More（レッド・クロス） - 3:58
- 星空への旅立ち - Calling Occupants of Interplanetary Craft（ベイブズ・イン・トイランド） - 4:06
- 雨の日と月曜日は - Rainy Days and Mondays（クラッカー） - 3:44
- あなたの影になりたい - Let Me Be the One（マシュー・スウィート） - 3:26
- 動物と子供たちの詩 - Bless the Beasts and Children（4ノン・ブロンズ） - 4:17
- 愛のプレリュード - We've Only Just Begun（グラント・リー・バッファロー） - 3:51

このアルバムは、カーペンターズの音楽が今なお多くのアーティストやリスナーに愛され続けている証であり、カーペンターズの持つ普遍的な魅力を再確認する貴重な機会を提供しています。また、異なる音楽ジャンルのアーティストたちがカーペンターズの楽曲に挑戦することで、これまでとは異なる新鮮な聴き方を提供してくれるのも、本作の大きな魅力の一つです。

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