インノサン少年十字軍

『インノサン少年十字軍』は、古屋兎丸による日本の漫画作品で、2008年から太田出版の『マンガ・エロティクス・エフ』で連載されました。この作品は、13世紀のヨーロッパで実際に起きた少年十字軍運動を題材とし、聖地エルサレムを目指す少年たちの悲劇的な運命を描いています。

概要

この漫画は、『マンガ・エロティクス・エフ』のVol.48からVol.72にかけて連載されました。物語は、十字軍遠征が盛んだった時代を舞台に、エルサレムを目指す少年たちの旅路と、そこで待ち受ける過酷な試練、そして悲惨な結末を克明に描いています。作中には、少年たちの純粋な信仰心や友情、そして裏切りや欲望など、人間の様々な感情が複雑に絡み合っています。また、古屋兎丸の特集が組まれた54号では、ギャグ風味の4コマ漫画『インノサン旅日記』も掲載されました。

あらすじ

1212年春、フランス北部の田舎町で、羊飼いの少年エティエンヌは、ある日不思議な喇叭を拾います。その喇叭はイエス・キリストからのもので、幻視を見たエティエンヌは奇跡を起こし、親友ニコラを含む12人の仲間と共に「少年十字軍」を結成します。彼らはエルサレムを目指し旅立ちますが、行く手には過酷な試練が待ち受けています。物語は、神の声に従いエルサレムを目指すエティエンヌと、様々な思惑から彼と行動を共にする少年たちの姿を追いかけます。

登場人物

少年十字軍

エティエンヌ：主人公。12歳の羊飼いの少年で、純粋な信仰心を持ちます。不思議な喇叭を手にしたことで、十字軍のシンボルとして崇められます。旅の途中で出会った娼婦の少女イザベルに恋心を抱きます。数々の奇跡を起こしますが、最後はミカエルに殺害されます。
ニコラ：12歳。エティエンヌの親友で、異教徒への強い憎しみを抱いています。十字軍では隊長を務め、過激な言動を繰り返しますが、ユーゴの策略が露見した後、エティエンヌとの友情を取り戻します。物語の語り部として、老いた姿で登場します。
クリスチャン：14歳の美少年で、博識な商人。十字軍では経理担当ですが、エルサレムを目指す理由は秘術の探求であり、信仰心は二の次です。エティエンヌに想いを寄せており、嫉妬心からイザベルを刺してしまいます。
アンリ：10歳。エティエンヌとニコラの友人。泣き虫で気弱な性格ですが、十字軍では副隊長を務めます。ユーゴに暴行された末に自殺してしまいます。
ルーク：14歳。エティエンヌとニコラの友人。快活な性格で、十字軍では第一参謀を務めます。盗賊に殺害されます。
マルク：13歳。エティエンヌとニコラの友人。明るい性格で場を和ませますが、脱走を企てた際にアンリに刺殺されます。
ギヨーム：12歳。領主の息子で、嫌味な性格。十字軍では隊服に釣られて参加。売春宿に出入りするなど素行が悪く、最後はテンプル[[騎士団]]に入団し、殺し合いの末に死亡します。
ピエール：11歳。ギヨームの腰巾着で、好色な性格。ギヨームと共にテンプル[[騎士団]]に入団し、殺し合いで死亡します。
レミー：12歳。ハンセン病に冒された少年。病気の平癒を祈りエルサレムを目指します。最後はエティエンヌに励まされながら息を引き取ります。
ロラン：11歳の双子の兄弟でリリアンの兄。テレパシー能力を持ち、リリアンと連絡を取り合います。ユーゴを捕まえようとして死亡します。
リリアン：11歳の双子の兄弟でロランの弟。兄に劣等感を抱き、ギヨーム達と行動を共にするようになります。テンプル[[騎士団]]に入団し、殺し合いの末に死亡します。
ミカエル：12歳。シトー修道会の修道士。精神遅滞を装っていますが、実は狡猾な知恵者です。エティエンヌを抹殺しようと暗躍し、最後は奴隷として売り飛ばされます。
ギー：14歳。元盗賊で、エティエンヌによって解放され十字軍に参加します。仲間思いで義理堅く、物語の終盤まで生き残りますが、後に強盗に殺害されます。

テンプル[[騎士団]]

ユーゴ：屈強な騎士。少年十字軍を助けるふりをしますが、実は彼らの名声を利用しようとする卑劣な人物です。男色家で、多くの少年たちを虐待します。最後はニコラとギーに殺害されます。

町の人々

エティエンヌの母：エティエンヌを見守る優しい母親です。
ニコラの叔父：養豚場を営む叔父です。
ギヨーム、ピエールの父：金持ちの父親です。
ルークの家族：息子を大切に思う普通の家族です。
アンリの家族：泣き虫のアンリを心配しています。
マルクの祖父母達：長寿の家族です。
クリスチャンの父：現実的な父親です。

その他

イザベル：エティエンヌ達が旅の途中で出会った娼婦の少女です。エティエンヌに敬服し、後に愛し合うようになります。
コレット：ヴァルド派の説教者で、エティエンヌ達を匿います。アルビジョア[[十字軍]]に捕まり火刑に処されます。
ゴッドフロワー：アルビジョア[[十字軍]]の神父で、異端者を断罪することを正義と信じています。
ベルナール：シトー会の院長で、ミカエルの父親です。
盗賊：ユーゴの領内で少年十字軍を襲った盗賊団です。

書誌情報

古屋兎丸『インノサン少年十字軍』太田出版、全3巻
上（2008年10月21日発売、ISBN 978-4-7783-2068-3）
中（2010年2月4日発売、ISBN 978-4-7783-2105-5）
下（2012年2月16日発売、ISBN 978-4-7783-2158-1）

インノサン少年十字軍