ウィリアム・コグスウェル・ホイットニー

ウィリアム・コグスウェル・ホイットニー（1825年1月25日 - 1882年8月29日）は、明治時代に日本政府に雇用され来日したアメリカ合衆国の教育者です。

経歴

ニュージャージー州ジョージタウンで生まれたホイットニーは、イェール大学を卒業後、ニューアークで商業学校を経営しましたが、経営は順調ではありませんでした。

1875年（明治8年）、駐米大使であった森有礼と商業学校の学生、富田鉄之助の仲介により、家族と共に来日。商法講習所（現在の一橋大学）で簿記を教えました。しかし、翌年講習所が東京府に移管された際、初代所長であった矢野二郎との間に意見の相違が生じ、1878年（明治11年）6月に辞任することとなりました。日本での生活は順風満帆とは言えませんでした。

その間、親交のあった勝海舟の邸宅内にホイットニー・バイブル塾を開設し、勝家の家族をはじめ、チャニング・ウィリアムズ（立教大学創設者、日本聖公会初代主教）、クレメント T. ブランシェ（立教女学校校長）、ボアソナード（フランス法学者）らと交流を深めました。バイブル塾を通じて、娘のクララは石井筆子（滝乃川学園第2代学園長、静修女学校校長）や、ボアソナードの娘ルイーズと親交を深めました。また、クララは後に留学から帰国する津田梅子、山川捨松ともバイブル塾で親しくなりました。

その後、津田仙がホイットニーのために設立した銀座の夜学校で、再び簿記を教えることになりました。長男ウィリス・ホイットニーの留学を機に、一度アメリカへ帰国。再来日を果たそうと向かう途中、ロンドンで急逝しました。

娘のクララは勝海舟の三男（庶子）である梶梅太郎と結婚し、6人の子供をもうけましたが、勝海舟の死後、夫と別れ、子供たちと共にアメリカへ帰国しました。

ホイットニーの実弟、ジョージ・ヘンリー・ホイットニーは、ニューアーク・メソジスト聖公会が1867年に設立したCentenary Collegiate Institute（現:en:Centenary University）の初代校長を務めました（1869年 - 1895年）。

言語学者のウィリアム・ドワイト・ホイットニー、地理学者のen:Josiah Whitneyは従兄弟にあたります。また、発明家のイーライ・ホイットニーは先祖にあたります。

ホイットニーの日本での教育活動は、簿記の普及に貢献するだけでなく、多くの知識人との交流を通じて、日本の近代化に間接的な影響を与えました。彼のバイブル塾は、女子教育の先駆者たちを育み、そのネットワークは後の日本の社会事業や教育に大きな役割を果たしました。短い滞在期間ではありましたが、ホイットニーの足跡は日本の近代史に深く刻まれています。

参考文献

デジタル版 日本人名大辞典+Plus（講談社）『ホイットニー』- コトバンク
朝日日本歴史人物事典（朝日新聞出版）『ホイットニー』- コトバンク

外部リンク

* 西川孝治郎, 弟の自伝を通じて見たウイリアム・シー・ホイトニー」『英学史研究』 1973巻 5号 1972年 p.129-134, 日本英学史学会, doi:10.5024/jeigakushi.1973.129

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