ウィリアム・ジョンソン (初代準男爵)

サー・ウィリアム・ジョンソン：植民地時代の行政官、軍人、そしてイロコイ連邦との橋渡し役

サー・ウィリアム・ジョンソン（1715頃-1774）は、アイルランド出身のイギリス人であり、行政官、軍人として、またイロコイ連邦との関係構築における重要な役割を果たしました。彼の波乱万丈な生涯は、北米大陸におけるイギリス植民地と先住民族の関係を深く理解する上で欠かせない要素を提供してくれます。

アイルランドからニューヨークへ

ジョンソンは1715年頃、アイルランド王国のミーズ県で生まれました。家族はカトリックのジェントリであり、イギリスでの昇進の機会は限られていました。そこで彼は、ニューヨーク植民地で土地を所有していた叔父、サー・ピーター・ウォーレンの誘いを受け、新天地での成功を夢見てアメリカへと渡ります。

1738年頃、ジョンソンはニューヨーク植民地に到着し、叔父の土地管理を始めました。この土地はモホーク川沿いにあり、イロコイ連邦の一部族であるモホーク族の居住地の中心部に位置していました。ジョンソンはモホーク語を習得し、彼らの文化や習慣を尊重することで、モホーク族との信頼関係を築き上げます。

イロコイ連邦との関係

ジョンソンはモホーク族との親交を深めるにつれて、彼らの権利と利益を代弁する役割を担うようになりました。1746年にはイロコイ連邦の代理人に任命され、イギリス政府との交渉や紛争解決に尽力。その功績から、モホーク族より名誉族長として「ワラギヤギー（偉大な仕事を引き受ける人物）」の名を与えられました。

フレンチ・インディアン戦争での活躍

1754年に勃発したフレンチ・インディアン戦争（七年戦争の北米戦線）において、ジョンソンはイギリス軍側の指揮官として重要な役割を果たしました。彼はイロコイ連邦の兵士と植民地民兵を率い、1755年のジョージ湖の戦いでフランス軍に勝利。この功績により、ジョンソンは準男爵に叙せられました。1759年のナイアガラ砦の包囲戦でも指揮を執り、砦の陥落に貢献。これらの戦功により、ジョンソンは軍事的才能を発揮し、イギリスの勝利に大きく貢献しました。

インディアン事務局長官として

1756年、ジョンソンはイギリス領アメリカ北部のインディアン事務局長官に任命され、先住民政策において絶大な権力を握ることになります。彼はイロコイ連邦との関係を重視し、彼らの力をイギリスの利益のために利用しようとしました。しかし、その一方で、ジョンソンは私的な土地経営にも手を染め、イロコイ連邦の土地を不正に入手していたという批判もあります。

ポンティアック戦争と晩年

フレンチ・インディアン戦争後、イギリスの政策に不満を抱いた先住民たちは、1763年にポンティアック戦争を起こしました。ジョンソンはポンティアックとの和平交渉に尽力し、1766年に条約を締結。これにより、ポンティアック戦争は終結しました。晩年のジョンソンは、先住民との紛争を防ぐために奔走。1774年に脳卒中で亡くなるまで、インディアン事務局長官として活動しました。

遺産と評価

サー・ウィリアム・ジョンソンは、その生涯を通じて、イギリス植民地とイロコイ連邦との関係構築に大きな影響を与えました。彼は軍人、行政官として活躍する一方で、先住民の土地を不正に取得したという批判も存在します。彼の功績と過ちは、複雑な歴史的背景の中で評価されるべきであり、彼の生涯は、北米大陸における植民地時代を理解する上で重要な手がかりとなります。

ジョンソンが築いたジョンソン・ホールは現在、ニューヨーク州の史跡として一般公開されており、彼の足跡を辿ることができます。

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