ウェリテス

ウェリテス：共和政ローマの軽装歩兵

ウェリテス（ラテン語: Velites）は、共和政ローマ軍に所属した軽装歩兵です。主に軍団兵が本格的な戦闘に入る前に、散兵として敵を撹乱する役割を担いました。

概要

ウェリテスは、共和政ローマ初期から後期にかけて存在した兵科です。当初は、ローマ市民の中でも特に資産を持たない者や、若い世代がその任に就きました。しかし、時代が進むにつれて、アウクシリア（補助兵力）として、ローマ市民権を持たない志願兵や同盟部族からの兵士が加わるようになりました。

装備

ウェリテスの特徴は、その軽装な装備にあります。彼らは、軽装の胴鎧、青銅製の兜、グラディウス（剣）、プギオ（短剣）、そして小型の盾と数本の投げ槍（テルム）を携えて戦場に赴きました。当時の共和政ローマでは、兵士は自らの装備を自費で購入する必要があり、ウェリテスのような軽装兵は、比較的貧しい市民が担当することが多かったようです。また、歴史家のポリュビオスは、ウェリテスは若い者が務めたと記録しています。盾は重装歩兵のものよりも軽量で、円形をしていました。脛当てを装備する兵士もいましたが、全体として軽装であるため、ローマ軍の中で最も高い機動力を有していました。

戦術

ポリュビオスの記述によれば、ウェリテスはローマ軍団の各マニプルス（中隊）に配備されていたとされ、これは研究者の間でも広く受け入れられています。他の軍団兵と異なり、ウェリテスは兜の上に狼の毛皮をまとい、敵味方を識別していました。

ローマ軍の主力は重装歩兵であり、ウェリテスは彼らの前に展開し、散開した隊列で投げ槍や石を投げて敵を攻撃しました。重装歩兵は、通常、突撃前に槍（ピルム）を一斉射撃して敵陣に斬り込みますが、ピュロスやカルタゴが戦象を投入してきた際には、ピルムを温存し、戦象対策に使用することを学びました。ウェリテスは、投げ槍（テルム）による攻撃で重装歩兵を支援し、戦象の進撃を阻止する役割も担いました。スキピオ・アフリカヌスは、ヒスパニア戦役やザマの戦いにおいて、ハンニバルの戦象に対してウェリテスを効果的に活用しています。

終焉

ローマ軍は、マリウスの軍制改革によって、兵士の資産による区分が撤廃され、武器が国から支給されるようになりました。また、兵装や訓練の均一化が進み、作戦展開能力が向上しました。ウェリテスは、アウクシリアとしてローマ市民権を持たない属州民や同盟部族（ガリア人、ゲルマン人など）が務めるようになり、その役割は徐々に縮小し、最終的にはローマ軍から姿を消しました。

再評価

2000年にアレクサンダー・ジュモディコフが発表した論文で、共和政中期のローマ軍団は、突撃前の一斉射撃だけでなく、ピルムを随時使用していたのではないかという推測がなされてから、ピルムの役割が見直され、軍団の戦術について再評価が行われています。しかし、従来説を覆せる程の根拠は史料からは読み取れません。ただし、ピルムではなく、ウェリテスのテルムによる援護射撃を、戦列を入れ替える時間稼ぎや、敵を足止めする目的で、戦闘中に随時利用していた可能性があり、時には敵の司令官を撃ち殺したことがあるとする説も出てきています。

参考文献

Jordan F. Slavik (2018). “Pilum and Telum: The Roman Infantryman's Style of Combat in the Middle Republic”. The Classical Journal (The Johns Hopkins University Press) 113 (2): 151-171.

関連項目

軍団兵
* アウクシリア

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