ウクライナのロシア占領地域

ウクライナのロシア占領地域とは、ウクライナ紛争の過程で、現在ロシアによって支配されているウクライナの地域を指します。ウクライナの法律では、これらの地域は「ウクライナの一時的被占領地域」と定義されています。

占領の開始と拡大

ロシアによる占領は2014年に始まり、クリミア半島の併合とドンバス地域の一部占領が行われました。2022年には、ロシア軍による本格的な侵攻が開始され、ウクライナ国内のより多くの地域が占領されました。しかし、ウクライナ軍の激しい抵抗と兵站上の問題から、ロシア軍はキーウ周辺などから撤退しました。

ウクライナ軍の反撃と解放

2022年9月には、ウクライナ軍がハルキウ地域で反転攻勢を成功させ、ロシア軍は撤退を余儀なくされました。さらに、南部での反転攻勢では、11月にヘルソン市を奪還する大きな成功を収めました。

ロシアによる併合宣言と国際社会の反応

2022年9月30日、ロシアはドネツク州、ヘルソン州、ルハンシク州、ザポリージャ州の併合を宣言しました。しかし、国連総会はこの併合を不法なものとして拒否し、ウクライナの領土保全を支持する決議を採択しました。

占領地域の規模

2022年以前、ロシアはウクライナの4万2000平方キロメートルを支配していましたが、2022年3月の全面侵攻後には、さらに11万9000平方キロメートルを占領し、合計でウクライナ領土の約27％にあたる16万1000平方キロメートルを占領しました。しかし、ウクライナ軍の反撃により、2022年11月までにロシアの支配地域はウクライナ領土の約18%に減少しました。

占領の背景

2013年11月以降、ウクライナ全土でユーロマイダン運動が起こり、親ロシア派のヴィクトル・ヤヌコーヴィチ大統領が失脚しました。これに危機感を抱いたロシアは、2014年にクリミア半島を侵攻、併合しました。また、ウクライナ東部では、親ロシア派による騒乱が発生し、ドネツク人民共和国とルハンシク人民共和国が建国され、ウクライナ政府との間で紛争が続いています。

ロシアによる支配の強化

2022年2月以降の本格的な侵攻により、ロシア軍はウクライナの広範な地域を占領しましたが、ウクライナ軍の抵抗により、進軍は停滞しました。その後、ロシアは占領地域における支配を強化し、住民へのロシアパスポート発行を強制するなどの政策を打ち出しました。国際社会は、これらの行為をジェノサイドであると非難しています。

影響を受けた地域

2014年以降、ウクライナ政府は「一時的被占領地域と集落のリスト」を更新し続けています。以下に、主な占領地域を示します。

クリミア自治共和国：全域が占領されています。
ドネツク州：ドネツク市、ホルリウカ市、マリウポリ市などが占領されています。
ルハンシク州：ルハーンシク市、アルチェフスク市などが占領されています。
ハルキウ州：2022年2月に占領されましたが、9月までにほとんどが解放されました。
ヘルソン州：2022年3月に占領され、11月にヘルソン市が解放されました。
ザポリージャ州：ベルジャーンシク市、メリトポリ市などが占領されています。
ムィコラーイウ州：一部地域が占領されましたが、2022年11月に解放されました。

過去に占領されていた地域

以下の地域は、一時的にロシア軍に占領されましたが、現在はウクライナ軍によって解放されています。

チェルニーヒウ州：2022年2月～4月
ドニプロペトロウシク州：2022年3月
キーウ州：2022年2月～4月
オデッサ州：ズミイヌイ島のみ、2022年2月～6月
ポルタヴァ州: 一部の地域、2022年2月
スームィ州：2022年2月～4月
ジトーミル州：2022年2月～4月

占領地での協力者問題

占領地が解放された後、数千人の民間人が協力罪で告発され、裁判にかけられています。

国際社会の反応

国際社会は、ロシアによるウクライナ領土の占領を非難し、ウクライナの主権と領土保全を支持しています。国連総会は、クリミア併合やロシアによる併合宣言を不法なものとして拒否する決議を採択しました。

また、欧州評議会議員会議（PACE）は、ウクライナの占領地域を「ロシア連邦の実効支配地域」と認定し、未管理地域で犯されたすべての犯罪に対する責任はロシアにあると明言しました。

ウクライナのロシア占領地域