ウクライナ国家国境庁

ウクライナ国家国境庁について

ウクライナ国家国境庁（Державна прикордонна служба України, ДПСУ）は、ウクライナ内務省の管轄下にある準軍事組織です。国境警備隊と沿岸警備隊を統括し、国境警備、海上警備、出入国管理、国境地域での密輸や犯罪捜査など、幅広い任務を遂行しています。軍人が勤務する組織であり、平時・戦時を問わず、ウクライナの安全保障に重要な役割を果たしています。

歴史

ウクライナ国家国境庁は、ソ連崩壊後に編成されたウクライナ国境軍と、その監督機関であったウクライナ国家国境警備委員会を再編する形で、2003年に設立されました。ウクライナの国境警備体制の中核を担う機関として、その歴史は比較的新しいながらも、重要な役割を果たしています。

組織機構

中央機構

国家国境庁は、以下の主要な部門で構成されています。

司令部：国家国境庁長官が指揮を執り、組織全体を統括します。
国家国境庁長官事務局：人事、会計、監督、広報、市民連絡などの業務を担います。
国境警備部：作戦、国境勤務、国境監督、組織動員、通信、情報分析、海上警備などの業務を行います。
特別編成業務部：職業訓練、技術監督、消防、市民保障、国際法務などの業務を行います。
捜査活動部：捜査、内部保安、捜査技術、証拠収集などの業務を行います。
兵器部：兵器、機材、航空、放射線防護、計量標準、交通安全などの業務を行います。
保障部：後方、保健、建設、調達などの業務を行います。

地域機関

国家国境庁は、全国各地に以下の地域機関を設置しています。

国家国境庁本部直属部隊：チェルニーヒウ、ジトーミル、訓練センター、中央病院、士官学校、軍楽隊、中央博物館など、様々な施設や部隊を擁しています。
中央国境地域局：キーウに拠点を置き、機動部隊「ドゾル」などを管轄しています。
西部国境地域局：リヴィウに拠点を置き、リヴィウ、ムカチェヴォ、チョープ、チェルニウツィー、ルーツィクなどの国境支隊を管轄しています。
南部国境地域局：オデッサに拠点を置き、オデッサ、ポジリスク、ビルホロド＝ドニストロフスキー、イズマイール、モヒリーウ・ポジーリシキー、ベルジャーンシク、ヘルソンなどの国境支隊を管轄しています。
東部国境地域局：ハルキウに拠点を置き、ドネツィク、クラマトルスク、ルハーンシク、ハルキウ、スームィ、ショストカなどの国境支隊を管轄しています。
海上国境地域局：オデッサに拠点を置き、マリウポリ、オデッサ、イズマイールの海上警備支隊を管轄しています。

解体済みの部隊

過去には、北部国境地域局、ドネツィク＝ルハーンシク国境地域局、リシチャンシク国境支隊、アゾフ＝黒海国境地域局などが存在しましたが、再編や解体により現在は存在しません。

主な任務

ウクライナ国家国境庁は、平時には以下のような任務を遂行します。

国境警備：陸上国境、海上国境における監視、警備活動を行います。
出入国管理：国境検問所における出入国審査、査証確認を行います。
密輸対策：国境地域における密輸、不法越境などの犯罪を取り締まります。
捜査活動：国境関連の犯罪捜査を行います。

また、戦時には、ウクライナ軍の指揮下に入り、国土防衛の任務に従事します。ドンバス戦争や2022年からのロシアによるウクライナ侵攻においても、最前線で戦い、国土防衛の一翼を担っています。

装備

航空機

ウクライナ国家国境庁は、以下の航空機を運用しています。

An-72P
An-24
An-26
Mi-8T
Mi-8MT
Mi-9
An-38（導入予定）

艦艇

ウクライナ国家国境庁は、以下の艦艇を運用しています。

1241.2号計画「ブルィスカーヴカ」型海上警備艦
205P号計画「タラーントゥル」型海上警備艦
1400M号計画「フルィーフ」型海上警備艇
50030号計画「カルカーン」型海上警備艇
14720号計画「フヴィーリャ」型特殊任務小型海上警備艇
1360号計画「クルィーム」型特殊任務小型警備艇
「ガレオン-280」型小型艇
「ガリア-640」型小型艇
「UMS-600」型小型艇
「ヘビー・デューティー-460」型小型艇

まとめ

ウクライナ国家国境庁は、ウクライナの国境警備、海上警備、出入国管理を担う重要な機関です。平時においては、国境警備、密輸対策などの任務を遂行し、戦時においては、国土防衛の任務にも従事します。ウクライナの安全保障にとって、欠かすことのできない存在です。

4月30日は「国境警備隊の日」と定められています。

もう一度検索