ウバザメ

ウバザメ（姥鮫）とは

ウバザメ（Cetorhinus maximus）は、ネズミザメ目ウバザメ科に属する唯一の種です。世界中の海に広く分布し、おとなしい性質とプランクトンを濾過して食べる生態が特徴です。

名称の由来

属名の Cetorhinus は、ギリシア語の「海の怪物」を意味する ketos と「鼻」を意味する rhinos に由来します。種小名の maximus は「最大」を意味します。和名の「ウバザメ」は、体側部の長い鰓裂が老婆の皺に似ていることに由来すると言われています。英名の Basking shark は、水面近くで餌を食べる様子が日光浴をしているように見えることに由来します。かつては、簡単に捕獲されることから「バカザメ」とも呼ばれていました。

分布

ウバザメは回遊性のサメで、亜寒帯から温帯の海域に広く分布しています。水温8～14℃を好み、プランクトンが豊富な海域に集まります。沿岸部や内湾で見られることもあります。

形態

ウバザメは、ネズミザメ目の中で最大の種類で、ジンベエザメに次いで2番目に大きなサメです。最大で全長12.27m、体重16tに達した記録があります。通常は全長3～8m程度ですが、9～10mを超える個体も存在します。

特徴的な鰓

ウバザメの最大の特徴は、その巨大な鰓裂です。他のサメの鰓裂が体高の半分程度であるのに対し、ウバザメの鰓裂は体幹をほぼ一周するほど大きく裂けています。鰓裂の間からは赤い鰓がはみ出し、プランクトンを濾し取るための鰓耙（さいは）と呼ばれる毛状の器官が密集しています。

ホホジロザメとの違い

ウバザメは、ネズミザメ科の体型を持つため、遠目にはホホジロザメと間違えられやすいです。しかし、以下の点で区別できます。

巨大な口（幅1mほど）
長くはっきりとした鰓裂
小さな目
細い胴回り
小さいかぎ状の歯

その他の特徴

傾いた尾部の柄
粗い肌
鋭い口吻
* 三日月状の尾びれ

体色は変化に富み、背中側が暗褐色から黒、腹側が鈍い白色をしています。体には、ウミヤツメやダルマザメに遭遇したことによる傷跡が見られることがあります。肝臓は非常に大きく、体重の25%を占め、浮力調節やエネルギー貯蔵の役割を担っていると考えられています。

生態

ウバザメはプランクトン食性のサメで、海面近くで口を大きく開けて泳ぎ、海水中のプランクトンを鰓耙で濾し取って食べます。1時間あたり2000リットルもの海水を濾過します。動きは緩慢で、時速約3.6kmで泳ぎます。

社会性

ウバザメは社会性動物で、性別ごとにグループを形成します。グループの規模は通常3～4尾ですが、最大で100尾に及ぶこともあります。視覚的な合図を使ってコミュニケーションをとっていると考えられています。

天敵

ウバザメの天敵は、シャチやイタチザメなどです。また、ウミヤツメがウバザメに食らいついている様子もよく見られます。

ブリーチング

ウバザメは、巨大な体で海面にジャンプする「ブリーチング」を行うことがあります。これは、寄生虫を追い払うためだと考えられています。最高速度は時速6.5kmと記録されています。

人間との関係

ウバザメは、かつては漁業の対象とされていました。肉は食用や魚粉に、皮膚は皮革に、肝臓は油に利用されました。現在では、主に鰭（ふかひれ）を取るために捕獲されています。軟骨は伝統中国医学の薬や媚薬として用いられることもあります。

保護

個体数の減少により、ウバザメは保護種に指定され、多くの国で取引が規制されています。イギリス、マルタ、アメリカ合衆国などでは捕獲が禁止されています。

観光

ウバザメは、人懐っこい性格から、ダイビングスポットとして人気を集めています。ダイバーの周りを旋回することもあり、その姿は多くの人々を魅了します。

誤認

ウバザメの死骸は、腐敗すると下顎が脱落するなど、生きている時とは大きく異なる姿になります。そのため、海岸に打ち上げられた死骸が、UMA（未確認生物）と騒がれることもあります。1977年にニュージーランドで発見されたニューネッシーも、腐敗したウバザメの死骸であると結論付けられています。

日本での漁

三重県では、かつて「突きん棒」と呼ばれる銛を使ったウバザメ漁が行われていました。しかし、この漁は1970年代までで、近年ではほとんど行われていません。専門家は、ウバザメの生息圏がメガマウスに移っている可能性を指摘しています。

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