ウラジーミルとスーズダリの白亜の建造物群

ウラジーミルとスーズダリの白亜の建造物群：中世ロシアの輝き

ロシアの古都ウラジーミルとスーズダリ。これらの都市を中心に点在する8つの建造物群は、1992年、ユネスコの世界遺産に登録されました。その特徴は、何と言っても白亜の壁面。大理石を用いた精巧な浮彫が施され、見る者を圧倒する美しさです。聖堂、修道院、城塞など、様々な建造物がこの地に残されています。

ロシア建国と深い繋がり

これらの建造物が位置するザリエーシェ地方は、オカ川流域の低地で、かつては深い森に覆われていました。キエフ大公国やノヴゴロド公国からは遠く離れた辺境の地でしたが、河川を通じてヴォルガ川、ドニエプル川、ネヴァ川と繋がり、交易の要衝として栄えました。肥沃な土地と森林による防衛は、スラヴ民族の移住を促し、12世紀にはウラジーミル・スーズダリ大公国が成立しました。

この地は中世ルーシの政治と宗教の中心地となり、ロシアという国家の形成に大きく貢献しました。従来の木造建築から、白亜の石造建築への転換期でもあり、多くの壮麗な聖堂や修道院が建設されました。しかし、13世紀半ばのモンゴル襲来によって、ウラジーミルとスーズダリは破壊され、聖堂建設は長く停滞。その後、モスクワやトヴェリなどの公国が台頭しました。それでも、モンゴル侵攻以前の建築の一部は奇跡的に現存し、世界遺産として受け継がれています。

世界遺産に登録された建造物群

世界遺産には、以下の建造物が登録されています。

ウラジーミル

ウラジーミルの生神女就寝大聖堂（1158年-1160年建築、1185年-1189年に拡張）
黄金の門（1158年-1164年に築かれた城門）
ドミトリエフスキー聖堂（1194年-1197年）

ボゴリュボヴォ

アンドレイ・ボゴリュブスキーの居城（1158年-1165年、後年に補修）
ネルリの生神女庇護聖堂（1165年）

スーズダリ

スーズダリのクレムリンと生神女誕生大聖堂（1222年-1225年、16世紀に改修）
スパソ・エフフィミエフ修道院（主に16世紀）

キデクシャ

聖ボリスとグレブ聖堂（1152年、後年に改修）

これらの建造物は、ウラジーミル・スーズダリ大公国の全盛期である12世紀から13世紀にかけて建設されたもので、ルーシにおけるビザンティン建築、中世ロシア建築の優れた例として高く評価されています。

世界遺産登録基準

この世界遺産は、以下の基準を満たして登録されました。

(1) 人類の創造的才能を表現する傑作。
(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
* (4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。

その他の関連建造物

世界遺産には登録されていませんが、ザリエーシェ地方には、同時代の白亜の聖堂建築が多数存在します。ウラジーミルのクニャーギニン女子修道院の聖堂群、スーズダリのポクロフスキー修道院の聖堂群、ペレスラヴリ・ザレスキーの救世主顕栄大聖堂、ユーリエフ・ポリスキーのゲオルギエフスキー聖堂などが挙げられます。これらの建造物も、中世ロシアの歴史を理解する上で重要な役割を果たしています。

ウラジーミルとスーズダリの白亜の建造物群は、単なる建築物群ではありません。それは、中世ロシアの歴史、文化、そして信仰が凝縮された、かけがえのない遺産なのです。

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