ウランゲリ島

ウランゲリ島：北極圏の生物多様性と歴史が息づく島

ウランゲリ島は、北極海、東シベリア海とチュクチ海の間、ロシア領に位置する島です。その特異な自然環境と歴史的背景から、多くの研究者や自然愛好家の注目を集めています。経度180度線が通るこの島は、日付変更線の東側に位置しています。

独特な生態系

ウランゲリ島は、ツンドラ気候に属していますが、第四紀の氷河期に氷河に覆われなかったため、驚くほどの生物多様性を誇ります。固有種を含む400種以上の維管束植物が生息し、タイヘイヨウセイウチ、トナカイ、ホッキョクギツネ、アザラシ、ウランゲルレミング、ホッキョクグマなど、多様な動物たちの生息地となっています。また、コククジラの餌場、シロフクロウ、ハクガン、ハヤブサなど約100種の渡り鳥の営巣地にもなっており、一部の鳥類にとっては最北端の繁殖地です。ウランゲリレミングは、他の北極圏のレミングとは異なる特徴を持ち、島のトナカイも大陸の個体とは異なる適応を見せています。このように、ウランゲリ島は、独自の進化の温床となっていると言えるでしょう。

歴史

島の名前は、探検家フェルディナント・フォン・ウランゲルに由来します。彼はチュクチ族から島の情報を得て探索を試みましたが、発見には至りませんでした。実際に島を発見したのは、アメリカの捕鯨船船長トマス・ロングです。1911年にはロシア人のグループが上陸し、1921年にはカナダの探検家ヴィルヒャムル・ステファンソンがカナダ領としようとしましたが、後にソ連によってその試みは阻止されました。1924年には、ソ連がこの島に町を建設し、現在の形に至っています。

マンモスの生息地

ウランゲリ島は、最後の氷河期にマンモスが生息していた場所としても有名です。島嶼化により、一般的なマンモスよりも小型に進化したと考えられています。かつては、紀元前1700年頃に原住民によって狩猟され絶滅したと考えられていましたが、最新の研究では、人類到達の約100年前にマンモスが絶滅していた可能性が指摘されています。また、遺伝的多様性も維持されていたという調査結果から、環境変化や狩猟ではなく、嵐や細菌、ウイルスといった突発的な出来事が絶滅の原因だったという説も浮上しています。

世界遺産

ウランゲリ島とその周辺のヘラルド島を含む自然保護区は、2004年にユネスコの世界遺産（自然遺産）に登録されました。この登録は、以下の基準に基づいています。

(9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本である。
(10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいる。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。

ウランゲリ島は、その独自の生態系と歴史から、地球上の貴重な自然遺産の一つとして、保護されています。

気候

気候はケッペンの気候区分ではツンドラ気候(ET)に属します。

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