エコール・サントラル・パリ

エコール・サントラル・パリ：フランスを代表する名門工科大学の軌跡

エコール・サントラル・パリ（École Centrale Paris）は、1829年に創立されたフランスの伝統ある工科大学です。かつてはグランテタブリスマン（フランスの高等教育機関の最高峰）の一つとして、エコール・ポリテクニーク、国立土木学校、パリ国立高等鉱業学校と並び、理工学・技術系の教育機関のトップに君臨していました。

その歴史は、アルフォンズ・ラヴァレを始めとする、物理学者のウジェーヌ・ペクレ（ペクレ数で知られる）、化学者のジャン＝バティスト・デュマ（デュマ法で知られる）、エミール・オリヴィエといった錚々たる顔ぶれによる設立に始まります。当初はパリ3区にありましたが、1969年にはパリ南西部近郊のシャトネ＝マラブリーに移転しました。

エコール・サントラル・パリの最大の特徴は、幅広い分野を網羅したカリキュラムと、実践的な教育です。入学後2年間は、数学、物理、化学、生物、工学、経済など、専門分野に特化せず、基礎となる幅広い知識を習得します。さらに、企業での研修にも重点が置かれ、理論と実践の両面からバランスのとれた人材育成を目指しています。3年間の修業年限に加え、博士課程（エコール・ドクトラル）も設置されており、研究者を目指す学生にも対応しています。

入学選抜試験は、その難関性で知られており、フランス国内のみならず、世界中から優秀な学生が集まります。卒業生は「サントラリアン（Centralien）」と呼ばれ、産業界で高い評価を得ています。エコール・サントラル・パリの卒業生は、多様な分野で活躍しており、その中にはエッフェル塔の設計者であるギュスターヴ・エッフェルや、ミシュランの創業者であるアンドレ・ミシュラン、プジョーの創業者であるアルマン・プジョーなど、世界的に著名な人物も含まれています。他にも、航空のパイオニアであるルイ・ブレリオ、数学者のソロモン・レフシェッツ、社会学者、哲学者であるジャン・ボードリヤールなど、各分野で革新的な功績を残した卒業生を多数輩出しています。日本の著名な卒業生としては、土木技師の沖野忠雄や実業家の清水誠などがいます。

なお、世界中で広く利用されているフリーのメディアプレーヤー、VLCメディアプレーヤーは、エコール・サントラル・パリの学生によって開発されたものです。これは、同校が常に技術革新の最前線に位置していることを示す象徴的な出来事と言えるでしょう。

2015年には、高等電気学校と合併し、「サントラルシュペレック」となりましたが、その歴史と伝統は、エコール・サントラル・グループの一員であるエコール・サントラル・パリ（そして、リヨン、リール、ナント、マルセイユ校）に受け継がれています。今後も、世界をリードするエンジニアの育成に貢献していくことは間違いありません。

著名な教員陣にも注目に値します。物理学者のウジェーヌ・ペクレ、化学者のジャン＝バティスト・デュマ、物理学者のガスパール＝ギュスターヴ・コリオリ、数学者のエミール・ピカール、ジョセフ・リウヴィル、化学者のアンセルム・ペイアンなど、各分野で大きな功績を残した教授陣が、エコール・サントラル・パリの教育レベルの高さを支えてきました。

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