エジプト第20王朝

エジプト第20王朝

エジプト第20王朝（紀元前1185年頃 - 紀元前1070年頃）は、新王国時代に存在した王朝であり、その時期はエジプトの繁栄が終焉を迎え、次第に衰退する過程を示しています。この王朝は、多くの王が「ラムセス」と名乗ったことから「ラムセス王朝」とも称されています。

歴史背景

第19王朝の時代には、王位継承を巡る混乱が続き、タウセルト女王の治世の後、王位が空位になる期間が存在しました。その後、セトナクトが王位を獲得し、第20王朝が始まります。この王朝の初期に関しては、具体的な詳細が不明な部分が多く、彼の治世が安定的だったのか、実際には混乱があったのかが分かっていません。初期の王セトナクトは、外敵の侵入から国を守る必要があり、彼の死後、王子ラムセス3世が即位します。

ラムセス3世は「最後の偉大な王」として知られ、彼の治世は新王国の繁栄の最終章と位置づけられています。彼の統治は祖先であるラムセス2世を手本とし、軍事的な遠征や建築活動を盛んに行いましたが、攻撃が続く外敵の出現により、大規模な外征は果たせませんでした。

外敵との戦い

ラムセス3世の治世の初期には、リビア人との戦争がありました。彼はリビアのメシュウェシュ族の連合軍を撃退し、多数の敵兵を捕虜にしました。また、イスラエルとの戦いも行われ、特にジャヒの戦いが記録されています。

治世第8年には「海の民」と呼ばれる新たな侵略者が登場しました。紀元前1200年頃から東地中海地域は多くの変動に見舞われ、歴史の記録によれば、海の民によってエジプトの同盟国が滅ぼされ、シリアやキプロスも打撃を受けました。ラムセス3世は防衛のために軍を強化し、この侵入者たちに対して勝利を収めることができました。彼の時代には、このような戦争の影響から逃れ、エジプトを守ることが重要な課題となりました。

内政の安定と神殿への寄進

ラムセス3世は外敵を排除した後、国内の安定を図ることに成功しました。彼は民衆が自由に国内を周ることを可能にし、兵士たちも家で休息できるようにしました。その中で、富をアメン神殿の建設に投入し、神殿の勢力が大きくなりました。この時期にはテーベにおけるアメン神殿への寄進が急激に増し、エジプトの人口の約5分の1、耕作地の3分の1が神殿領とされるようになりました。

経済問題とストライキ

しかし、安定の裏には内政の問題もありました。特に、第29年には史上初のストライキが発生しました。これは労働者たちが遅配された給与に抗議するもので、給与の供給が滞り、デール・エル・メディーナの職人たちが行動を起こしました。この事件は、王権が必ずしも国民のニーズに応えられない現状を露呈しました。

ラムセス3世の死とその後

ラムセス3世の治世末期には、彼の暗殺が計画され、妃ティイの息子ペンタウアーが王位を狙いましたが、計画は失敗に終わります。ラムセス3世は暗殺され、その後の裁判で多くの参加者が有罪となります。彼の死はエジプト新王国時代の終焉を意味し、その後、ラムセス4世からラムセス11世にかけての王たちの治世は不安定なものでした。

王権の弱体化が進み、エジプトは衰退していく中で、アメン神殿の勢力が拡大し、王権を脅かす存在となっていきました。最終的にラムセス11世が治世を終える頃には、エジプトは新たな時代に突入し、第21王朝が成立します。このようにエジプト第20王朝は、衰退と変革の時代として記憶されています。

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