エドワード・スタッフォード (第3代バッキンガム公爵)

第3代バッキンガム公エドワード・スタッフォード：栄光と悲劇の生涯

エドワード・スタッフォード、第3代バッキンガム公爵は、15世紀末から16世紀初頭にかけてイングランドで活躍した、名門貴族であり、その生涯は栄光と悲劇に彩られています。彼は1478年2月3日に生まれ、王室との深いつながりを持ちながら、時代の波に翻弄され、壮絶な最期を遂げることになります。

彼の父、第2代バッキンガム公ヘンリー・スタッフォードは、リチャード3世に反乱を起こし処刑されたため、エドワードは幼少期、公爵位を継承できませんでした。しかし、1485年、ヘンリー・テューダーがリチャード3世を倒してヘンリー7世として即位すると、エドワードはバッキンガム公爵に叙爵され、新たな公爵位を与えられました。

王室の後見のもとで成長したエドワードは、バッキンガムシャーやグロスタシャーといった広大な領地を所有し、ロンドンやカレーにも屋敷を構える大貴族でした。華美な衣装と洗練された振る舞いは人々の注目を集め、若くしてヘンリー7世の様々な儀式を取り仕切るなど、その才能を発揮しました。1495年にはガーター勲章を授与され、その地位は不動のものとなりました。

1501年、キャサリン・オブ・アラゴンがアーサー王子妃としてイングランドに嫁いだ際には、500人の私兵を率いて華麗な出迎えを行い、キャサリンを魅了しました。ロンドンまでの同行や結婚式での馬上槍試合での活躍は、王からの厚い信頼と寵愛を反映しています。

しかし、華やかな表舞台の裏では、エドワードはヘンリー7世からの厳しい財政的圧迫を受けていました。高潔な性格と短気な一面を持つ彼は、王位継承権を有する血筋を持つことから、ヘンリー7世から常に警戒の目で見られていました。書類上の不備や母の再婚などを理由に、度重なる罰金を課せられ、その恨みは日増しに募っていきました。私軍の編成を企てるなど、王への反発を強めていきました。妻の持参金までも取り上げられたり、アーサー王子の葬儀に招かれなかったりと、王室からの仕打ちに苦しみました。

ヘンリー7世の死後、即位したヘンリー8世から大司馬に任命されましたが、その任期は戴冠式前日の一日限りという屈辱的なものでした。それでも同年に王冠の戴冠役を務めるなど、複雑な立場の中で過ごしました。

1510年には、ヘンリー8世の妹と側近を巡るスキャンダルに巻き込まれ、王と対立することになります。王の怒りを買い、妹は解任されるという事態に発展しました。弟の投獄なども含め、王の側近による貴族排斥工作の影が潜んでいるとされています。一方、1513年のカンブレー同盟戦争や1520年の金襴の陣には従軍するなど、王への忠誠を示す行動も見せていました。

しかし、1521年、ヘンリー8世の側近トマス・ウルジーからの密告により、謀反の疑いで逮捕され、ロンドン塔に投獄されました。さしたる証拠もなく裁判にかけられ、5月17日、タワー・ヒルにて斬首刑によって処刑されました。その処刑理由は、ヘンリー8世のキャサリンとの間に男児が生まれず、王位継承問題への不安が高まっていたことにあります。王位継承権を持つバッキンガム公は、王にとって危険な存在だったのです。

バッキンガム公爵位は消滅し、大司馬の地位も王権に統合されました。彼の処刑は、王室と貴族との間の権力闘争、そして王位継承問題が絡み合った悲劇的な出来事でした。彼の死後、遺領はウルジーやノーフォーク公トマス・ハワードらに与えられ、バッキンガム公爵位はジェームズ1世の時代まで復活することはありませんでした。

エドワード・スタッフォードの生涯は、華麗な貴族としての成功と、王室との複雑な関係、そして悲劇的な最期を物語るものです。彼の波乱に満ちた人生は、テューダー朝イングランドの歴史において、重要な一章を刻んでいると言えるでしょう。

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