エブラーヒーム・ライースィー

セイイェド・エブラーヒーム・ライースィー：イランの政治家、司法関係者、そして大統領

セイイェド・エブラーヒーム・ライースィー（Seyed Ebrahim Raisi, 1960年12月14日 - 2024年5月19日）は、イランの政治において重要な役割を果たした人物です。彼は、第8代イラン大統領（2021年8月3日 - 2024年5月19日）として知られ、その経歴は司法関係者、イスラム教シーア派ウラマーとしても多岐にわたります。

生い立ちと司法キャリア

ライースィーは、パフラヴィー朝時代の1960年12月14日にマシュハドで生まれました。コラサン神学校を卒業後、イラン革命後の1985年にテヘランの次席検事に任命され、首都へと拠点を移します。1988年初頭には、革命後の最高指導者ルーホッラー・ホメイニーの目に留まり、ロレスターン州、セムナーン州、ケルマーンシャー州など各州の法的問題に取り組むための特別な権限を授けられました。

その後、ライースィーはイランの司法システムにおいて様々な要職を歴任しました。2014年9月から2016年4月にかけて検事総長、2004年8月から2014年9月にかけては司法府第一副長官を務め、2019年3月には司法府長官に就任しました。

2017年大統領選挙

2017年4月6日、ライースィーは大統領選挙への出馬を表明。最終的に1636人が立候補する中で、ライースィーと現職のハサン・ロウハーニーを含む6人が正式な候補者として認められました。選挙戦では、保守派のモハンマド・バーゲル・ガーリーバーフが辞退し、ライースィーへの支持を表明しました。

しかし、2017年5月19日の選挙では、ライースィーは約38.3％の票を獲得したものの、ロウハーニー大統領が過半数を獲得し、ライースィーは落選しました。それでも、彼の得票数はイラン大統領選における落選候補としては過去最高であり、非常に僅差の敗北となりました。

2021年大統領選挙と大統領としての活動

当初、2021年の大統領選挙への不出馬を示唆していましたが、後に翻意し立候補。2021年6月18日の投票では、約61.95％の票を獲得し、1回目の投票で当選を果たしました。

内政

大統領として、ライースィーは内政において人権弾圧を主導したとの批判も存在します。検事としての経歴の中で、反体制派の粛清に関与したとされ、「テヘランの屠殺者」と呼ばれることもありました。

外交

外交面では、2021年9月にタジキスタンを訪問し、上海協力機構（SCO）の首脳会議に出席。イランのSCO加盟を機に、制裁への対抗を訴えました。また、妻のジャミーレ・アラモルホダーも大統領夫人として外交活動を行い、2023年のパレスチナ・イスラエル戦争では、欧州各国の首脳夫人に書簡を送り、ガザ地区の状況を訴えました。

経済

経済政策においては、「抵抗経済」の活性化を重視し、農業部門の発展を支持しました。また、国民への給付金増額や、汚職対策、雇用創出を公約に掲げました。対イラン制裁に対しては、制裁を経済力強化の機会と捉え、制裁解除を追求する姿勢を示しました。

突然の死

2024年5月19日、ライースィーはアゼルバイジャン訪問後、ホセイン・アミールアブドッラーヒヤーン外務大臣らと共に搭乗したヘリコプターが墜落し、死亡しました。この事故はイラン国内外に衝撃を与え、彼の政治的遺産に対する議論を呼んでいます。

私生活

ライースィーは、マシュハドの金曜礼拝導師を務めるアフマド・アラモルホダーの娘、ジャミーレ・アラモルホダーと結婚しており、二人の娘がいます。妻のジャミーレは、シャヒード・ベヘシュティー大学の准教授であり、同大学の研究所長も務めています。

セイイェド・エブラーヒーム・ライースィーの生涯は、イランの政治、司法、そして社会における重要な転換期と深く結びついており、彼の行動と政策は今後も様々な角度から評価されるでしょう。

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