ロレスターン州

ロレスターン州：イラン西部の歴史と自然が織りなす地

ロレスターン州は、イラン西部に位置する山岳地帯で、その名は「ロルの地」を意味します。ザーグロス山脈の雄大な自然と、古代からの歴史が織りなす景観が特徴です。

地理と気候

ロレスターンは、イラク国境から約650km、ケルマーンシャー州からファールス州にかけて広がる地域です。ザーグロス山脈の支脈が連なり、山がちな地形を形成しています。主峰は万年雪を抱き、標高4000mを超えるものもあります。この地域は、ザーヤンデ・ルード川、ジャラーヒー川、カールーン川などの重要な河川の源流地でもあります。高地を下ると、肥沃な台地や平野が広がり、灌漑農業が盛んです。気候は、冬に降水のある亜湿大陸性気候で、年間降水量はイラン国内でも多い地域です。夏は乾燥しますが、冬には雪が降ります。

歴史

ロレスターン州は、イランでも有数の古い歴史を持つ地域です。紀元前3千年紀から4千年紀にかけて、外部から人々が移り住み、ザーグロス山地に定住しました。ロル人は、紀元前1千年紀にカスピ海東方から来た人々の末裔とされ、人類学的にはクルド人に近いとされています。

北部：ロレ・クーチェク（小ロレスターン）

ロレスターン北部は「ロレ・クーチェク」と呼ばれ、フェイリー・ロルが居住しています。1155年以来、ホルシーディー家の君主が統治し、後にアターベク政権として自治を維持しました。サファヴィー朝のアッバース1世によって完全に併合された後も、地域を統治するワーリー（太守）が置かれました。

南部：ロレ・ボゾルグ（大ロレスターン）

ロレスターン南部は、フーゼスターン州のバフティヤーリー地域やファールス州の一部とともに「ロレ・ボゾルグ」と呼ばれました。1160年から1424年まで、ファズレヴィーエ家のアターベク政権が自治的な地域を形成しました。

住民と文化

現在のロレスターン州には、バフティヤーリー族やクルド人などが居住しています。ロル語やラキ語が話されており、それぞれ異なる文法と語彙を持っています。ロル語はペルシア語に近い言語です。

文化遺産

ロレスターン州には、イラン文化遺産協会に登録された263もの文化遺産があります。ファラーコル・アフラーク城塞やカーシュガーン橋、ボルージェルド金曜モスクなどが主要な観光スポットです。ガハール湖やキーユー湖などの自然景観も楽しめます。

現代のロレスターン

20世紀に至るまで、ロル族の多くは遊牧民でしたが、パフラヴィー朝政府の定住化政策により、都市や村に定住するようになりました。現在では、州内の都市やイラン国内の大都市に多くのロル族が暮らしています。

ロレスターン州は、豊かな自然と古代からの歴史、多様な文化が融合した魅力的な地域です。旅行者にとって、この地は忘れられない体験となるでしょう。

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