エル・イエロ島

エル・イエロ島：大西洋に浮かぶ「子午線の島」

エル・イエロ島は、アフリカ沖の大西洋に浮かぶカナリア諸[[島]]の最南西端に位置する島です。その特異な地理的特徴から「子午線の島」とも呼ばれ、独自の文化と自然環境を有しています。面積は278平方キロメートル、最高標高は1,501メートルで、人口は約1万人です。島の主要な町は北東岸に位置するバルベルデです。

名称の由来

「エル・イエロ」（El Hierro）という名前はスペイン語で「鉄」を意味する言葉と同じ綴りをしていますが、実際にはその意味とは関係がありません。この名前は、中世スペイン語の正書法に由来し、当時の文字の慣習によるものです。しかし、「鉄」と同じ綴りであることから、他の言語では「鉄」に関連する名前で呼ばれることが多くなりました。

島の元の名前は「ero」や「erro」、「yerro」などと言われていますが、その語源は不明です。島の先住民であるグアンチェ族の言葉に由来するのではないかと考えられています。一説によると、グアンチェ語で「強い」を意味する「Esero」が名前の由来であるとも言われています。また、「貯水池」を意味する言葉が、民間語源によって「hierro」になったという説もあります。グアンチェ族は雨水を貯めるために貯水池を築いていたと考えられています。

歴史

エル・イエロ島には、グアンチェ族という先住民が暮らしていました。彼らはフランスの探検家ジャン・ド・ベタンクールの支配下に入りますが、これは武力による征服ではなく交渉によるものでした。ベタンクールは、島の当主の兄弟であるAugeronを交渉役として利用しました。しかし、ベタンクールは島民の自由を尊重するという約束を破り、多くのグアンチェ族を奴隷として売ってしまいます。その後、島にはフランス人やガリシア人が移住し、島知事による苛酷な統治に対して先住民による反乱も起こりましたが、最終的には鎮圧されました。

地理と生態系

エル・イエロ島は、カナリア諸[[島]]の中で最も小さく、険しい地形を持つ火山島です。海岸線の大部分は断崖となっており、マカロネシアの生物地理区に属しています。多様な植生があり、トウダイグサ属の植物が生える沿岸部、ビャクシン属の林、照葉樹林、カナリアマツの森林などが見られます。島には、固有種や絶滅危惧種の動物も生息しています。2000年には島の60%がユネスコの生物圏保護区に指定され、2014年には全域が世界ジオパークに認定されました。

島は火山活動によって形成されており、過去には1度の噴火が記録されています。約120万年前に3つの噴火によって現在の形となり、多くの火山円錐丘や洞穴が存在します。島の最高地点はマルパソで、標高1,501メートルです。気候は南北で大きく異なり、南部は降水量が少ない一方で、北部では降水量が多くなっています。

観光と交通

エル・イエロ島は、他のカナリア諸[[島]]の島と同様に、観光地としても知られています。エル・イエロ空港とフェリーターミナルがあり、テネリフェ[[島]]からアクセスできます。手付かずの自然が残る島内では、ハイキングやダイビングなどのアクティビティが楽しめます。

行政組織

エル・イエロ島は、サンタ・クルス・デ・テネリフェ県に属しており、3つの基礎自治体（ムニシピオ）があります。それらは、フロンテラ、バルベルデ、エル・ピナールです。島の行政機関はバルベルデにあり、島の人口の約半分がこの町に住んでいます。

「子午線の島」としての歴史

エル・イエロ島は、歴史的にヨーロッパにおける共通の本初子午線が設定された場所として知られています。プトレマイオスは、当時知られていた世界の西端に基づいて経度0度を設定しました。17世紀には、フランスがフェロ島（エル・イエロ島）を通る子午線を地図の基準としました。これは、フェロ島が旧世界の西端とみなされていたためです。パリ子午線からのずれを考慮し、フェロ子午線はパリ子午線より20度西に設定されました。

エネルギー

エル・イエロ島は、再生可能エネルギーの活用に積極的に取り組んでおり、2014年には風力発電と水力発電による電力供給で、世界初の再生可能エネルギーによる自給自足の島となりました。

文学におけるエル・イエロ島

イタリアの作家ウンベルト・エーコの小説『前日島』には、エル・イエロ島が登場します。この小説は、国際日付変更線上の島に漂着したイタリア人青年の物語で、エル・イエロ島が重要な舞台の一つとなっています。

エル・イエロ島は、その歴史、地理、文化、そして技術的な進歩において、他に類を見ない魅力的な島です。その独自の自然環境と、持続可能な社会を目指す姿勢は、世界から注目を集めています。

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