エレクトラ (リヒャルト・シュトラウス)

リヒャルト・シュトラウスのオペラ『エレクトラ』

『エレクトラ』（Elektra Op.58）は、リヒャルト・シュトラウスが作曲した単幕のオペラであり、フーゴ・フォン・ホーフマンスタールが台本を手掛けました。ソフォクレスのギリシャ悲劇『エレクトラ』を基にしつつも、独自の解釈が加えられています。本作は、シュトラウスとホーフマンスタールの協働による最初のオペラ作品であり、「フーゴ・フォン・ホーフマンスタールによる一幕の悲劇」という副題が付けられています。

概要

シュトラウスは、ホーフマンスタールの戯曲『エレクトラ』を観劇したことがきっかけとなり、オペラ化を決意しました。前作の『サロメ』と類似した題材であることは認識していましたが、ホーフマンスタールの才能と、戯曲の持つオペラとしての可能性に惹かれたのです。音楽は『サロメ』よりもさらに大規模なオーケストラを必要とし、複雑で演奏困難なものとして知られています。

音楽的には、エレクトラ和音（E-H-D♭-F-A♭）などの多重和音を駆使し、シュトラウスの作品の中でも最も無調に近いとされています。しかし、本作以降、シュトラウスはモダニズムから離れていくことになります。

作曲の経緯

ホーフマンスタールとの出会い

シュトラウスとホーフマンスタールが初めて出会ったのは、作曲の6年前の1900年でした。シュトラウスは自作の『英雄の生涯』を指揮するためにパリに滞在しており、その際にホーフマンスタールと面会しました。ホーフマンスタールは以前からシュトラウスとの協力を望み、手紙を送っていましたが、シュトラウスはこれを黙殺していました。

ホーフマンスタールは当初、バレエ音楽での協力を提案しましたが、シュトラウスはオペラ『火の危機』の作曲中であったため、オペラでの協力を希望しました。この出会いを機に、二人は親交を深め、オペラに関する手紙のやり取りを重ねました。

台本

ホーフマンスタールは、オペラ化を念頭に置いて執筆していた台本の一つとして『エレクトラ』を完成させました。この台本は、ソフォクレスのギリシャ悲劇を基にしながらも、独自の解釈が加えられています。1903年にベルリンで初演された際、シュトラウスも観劇し、オペラ化の可能性を見出しました。シュトラウスは学生時代にもソフォクレスの『エレクトラ』のための合唱曲を作曲しており、以前からこの題材に関心を抱いていました。

台本の作成は作曲と同時進行で行われ、最終稿が完成したのは1908年6月、総譜が一通り完成した後でした。

作曲

オペラ『サロメ』を完成させた直後の1906年、シュトラウスは作曲に着手し、ホーフマンスタールと相談しながら準備を進めました。1907年末にはオペラの結末について議論が交わされ、1908年6月にはガルミッシュの山荘で総譜が一通り完成、同年9月22日に全体が完成しました。

初演

1909年1月25日、ドレスデン宮廷歌劇場にて、エルンスト・フォン・シューフの指揮、ゲオルク・トラー（ヴィリ・ヴィルクとも）の演出で初演されました。初演の評判は賛否両論に分かれましたが、その後、各地で上演されるようになりました。

編成

『エレクトラ』は、当時のオペラとしては最大規模の編成を誇り、116名の演奏者を必要とします。これは、ワーグナーの『ニーベルングの指環』の108人を超える規模です。

木管楽器: ピッコロ、フルート、オーボエ、イングリッシュホルン、ヘッケルフォーン、E♭管クラリネット、B♭管/A管クラリネット、バセットホルン、バスクラリネット、ファゴット、コントラファゴット
金管楽器: ホルン、テナーチューバ（ワーグナーチューバ）、トランペット、バストランペット、トロンボーン、コントラバストロンボーン、バスチューバ
打楽器: ティンパニ、タムタム、シンバル、大太鼓、小太鼓、タンブリン、トライアングル、グロッケンシュピール、カスタネット
その他: チェレスタ、ハープ
* 弦五部: ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス

登場人物

（省略）

演奏時間

カットなしの場合、約1時間45分。

あらすじ

舞台は古代ギリシャのミケーネ城。アガメムノン王の娘エレクトラは、父が母クリテムネストラとその愛人エギストによって殺害された復讐を誓います。妹クリソテミスは復讐を恐れ、エレクトラを止めようとしますが、エレクトラの決意は固いです。母クリテムネストラは良心の呵責に苦しみ、エレクトラに助けを求めますが、エレクトラは冷酷に復讐の予言を告げます。弟オレストが死んだという知らせが届き、絶望したエレクトラは自ら復讐を遂げようとしますが、そこに死んだはずのオレストが現れます。オレストは母クリテムネストラとエギストを殺害し、復讐は果たされます。狂喜乱舞するエレクトラはその場で倒れ、幕が閉じられます。

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