エレミヤの手紙

『エレミヤの手紙』は、旧約聖書に属する文書の一つであり、その正典としての扱いは宗派によって異なります。ユダヤ教とプロテスタント諸派では外典と見なされる一方、カトリック教会と正教会では旧約聖書の一部として受け入れられています。この文書は、ラテン語訳聖書であるウルガタや欽定訳聖書においては、『バルク書』の第6章として収録されています。

文章は散文体で書かれており、クムラン洞窟で発見されたギリシア語の断片から、少なくとも1世紀には存在していたと考えられています。文書の冒頭には、預言者エレミヤが著者であるとされていますが、聖書学者ヒエロニムスはこれを否定しており、後世の作者によって書かれたという説が有力です。

内容としては、バビロン捕囚によって故郷を離れることになった民に向けて、偶像崇拝の愚かさを説く手紙という形式を取っています。この手紙は、偶像がいかに無力であるかを強調し、その無能さを具体的に列挙しています。偶像は生命を持たず、歩くことも話すことも、何も感じることもできないと指摘し、それらを崇拝する行為自体が嘲笑の対象であると述べています。手紙全体を通して、偶像礼拝の無意味さと、それに対する信仰の無益さが一貫して主張されています。

『エレミヤの手紙』は、その成立時期や著者に関する議論がある一方で、その内容は、偶像崇拝に対する批判という点で、旧約聖書の他の書物との関連性も見られます。特に、預言者エレミヤが偶像崇拝を厳しく非難したことからも、この手紙が彼の名のもとに書かれた背景が理解できます。また、この文書が外典として扱われる理由の一つに、正典としての権威が確立された時期以降に成立したという見解もあります。

この手紙は、偶像の無力を説くと同時に、神への信仰の重要性を強調しています。バビロンに連れて行かれる民に対して、偶像に頼るのではなく、唯一の神に立ち返るように促すメッセージが込められていると考えられます。このような背景から、この文書は、宗教的な教訓を含む文学作品として、後世に影響を与えたと言えるでしょう。

関連する項目としては、預言者エレミヤ、エレミヤ書、第二正典が挙げられます。これらの項目を併せて参照することで、より深く『エレミヤの手紙』を理解することができます。この文書は、古代イスラエルの宗教的な歴史と文化を理解する上で、重要な資料の一つと言えるでしょう。

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