エレーナ・ヴァシリーエヴナ・オブラスツォワ(Elena Vasiliyevna Obraztsova、1939年7月7日 - 2015年1月12日)は、ロシアを代表する
メゾソプラノ歌手であり、その卓越した歌唱力と演技力で世界中の聴衆を魅了しました。1976年には
ソ連人民芸術家賞を受賞するなど、数々の栄誉に輝いています。
生涯
オブラスツォワは、第二次世界大戦中の過酷な
レニングラード包囲戦を生き抜きました。幼少期には、レニングラードのピオネール宮殿の児童合唱団に参加し、音楽への道を歩み始めました。その後、
タガンログのチャイコフスキー音楽学校、
ロストフ・ナ・ドヌの音楽学校で学び、1958年にレニングラード音楽院に入学しました。1963年には、モスクワの
ボリショイ劇場に招かれ、『
ボリス・ゴドゥノフ』に出演し、ヨーロッパではパリのサル・プレイエルでのリサイタルでデビューを飾りました。
オペラでのキャリア
オブラスツォワは、
クラウディオ・アバドや
ヘルベルト・フォン・カラヤンといった一流の指揮者と共演し、数多くのオペラで主要な役を演じました。1977年12月には、
スカラ座200周年のオープニング公演『
ドン・カルロ』でエボリ公女を演じ、その才能を世界に知らしめました。また、1976年にはニューヨークで『
アイーダ』に出演し、「一流のアーティスト」として絶賛されました。1978年には、フランコ・ゼッフィレッリ監督のテレビ用プロダクション『カルメン』でタイトルロールを演じ、
プラシド・ドミンゴと共演したことは、彼女のキャリアにおける大きなハイライトの一つです。さらに、ゼッフィレッリ監督の映画版『
カヴァレリア・ルスティカーナ』では、サントゥッツァ役を演じました。
ルチアーノ・パヴァロッティ、ジョーン・サザーランド、イグヴァール・ヴィクセルなど、同時代の著名なオペラ歌手とも数多く共演し、『
ドン・カルロ』ではドミンゴとマーガレット・プライスと共に舞台に立ちました。
1990年12月27日には、
社会主義労働英雄の称号である「鎌と槌」金メダルを授与され、ソヴィエト音楽への貢献が認められ、ソヴィエトの書記長から
レーニン勲章を授与されました。2007年6月には、サンクトペテルブルクの
ミハイロフスキー劇場の芸術監督に就任し、若い歌手の育成にも尽力しました。
ミハイロフスキー劇場では、チャイコフスキーの『スペードの女王』で伯爵夫人役を定期的に演じていました。2008年に芸術監督の契約を終えた後も、自身の名を冠したコンクールに注力し、サンクトペテルブルク国際音楽アカデミーのプロジェクトを推進しました。また、総監督芸術顧問として
ミハイロフスキー劇場への協力を継続しました。
2009年7月7日には、70歳の誕生日を記念して、
ミハイロフスキー劇場で特別なプログラムが上演され、バレエ、オペラアリア、映画の抜粋、ジャズ、ピアノリサイタルなど、多彩なパフォーマンスが披露されました。
私生活
オブラスツォワは、ソヴィエト連邦の熱烈な支持者であり、1974年には、アレクサンドル・ソルジェニーツィンを支援していた
ムスティスラフ・ロストロポーヴィチとガリーナ・ヴィシネフスカヤを非難する書面に署名しました。国際デルポイ競技の支援も表明し、2009年の済州島韓国大会と2011年のヨハネスブルク大会に自筆のサイン入り挨拶文を送りました。
二度の結婚歴があり、最初の夫は物理学者のヴャチェスラフ・マカロフ、二番目の夫は
ボリショイ劇場の指揮者アルジス・ジウレイティスです。マカロフとの間に娘のエレーナがいます。
死去
2015年1月12日、ドイツの
ライプツィヒで医学的治療を受けている最中に75歳で亡くなりました。
表彰・受賞
ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国(RSFSR)グリンカ国家賞(1位)(1962年、1973年)
ヴィニャス賞(1位、バルセロナ国際声楽コンクール)(1970年)
ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国功労芸術家
チャイコフスキー国際コンクール1位(1970年)
労働赤旗勲章(1971年、1980年の2度)
ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国人民芸術家(1973年)
レーニン賞(1976年)
ソ連人民芸術家(1976年)
社会主義労働英雄(1990年12月27日)
レーニン勲章(1990年12月27日)
祖国メリット勲章(1999年6月17日3等、2009年6月10日2等)
カスタ・ディーヴァ賞(2002)
モスクワ聖ダニエル勲章(1等、ロシア正教会、2009年)
レパートリー
オブラスツォワは、数多くのオペラで主要な役を演じましたが、コンサート形式の上演でもその才能を発揮しました。
脚注
[1] Концертное исполнение
外部リンク
Yelena Obraztsova - IMDb(英語)