オイオーノス

オイオーノス（古希: Οἰωνός, Oiōnos）は、ギリシア神話に登場する人物であり、長母音を省略してオイオノスとも呼ばれることがあります。彼はリキュムニオスの息子であり、アルゲイオス、メラースという兄弟がいました。

オイオーノスは、英雄ヘーラクレースと親しい間柄であったと伝えられています。若い頃、オイオーノスはヘーラクレースと共にラケダイモーンを訪れました。しかし、ヒッポコオーン王の館の前を通りかかった際、館から出てきた番犬がオイオーノスを襲いました。身を守るため、オイオーノスは石を投げて番犬を殺してしまいました。

この行為がきっかけとなり、ヒッポコオーンの息子たちが現れて、オイオーノスを棍棒で殴り殺してしまいました。この悲劇的な出来事に激怒したヘーラクレースは、ラケダイモーンを攻撃し、ヒッポコオーンの一族を皆殺しにしました。アポロドーロスの記述にはオイオーノスの名前は登場しません。

この戦いの中で、ヘーラクレースの兄弟であるイーピクレースが戦死しました。オイオーノスとイーピクレースの死を深く悲しんだヘーラクレースは、カリュドーンに移住したとも伝えられています。

このように、オイオーノスは神話の中で、その短い生涯の中で悲劇的な事件の中心に位置しています。彼の死は、ヘーラクレースの怒りを買い、復讐の連鎖を引き起こすことになりました。彼の物語は、ギリシア神話における人間の運命の儚さや、神々の関与における悲劇を描き出しています。

また、オイオーノスの物語は、家族間の絆や復讐の連鎖といった、普遍的なテーマを包含しています。神話に登場する他の英雄たちとは異なり、彼は自らの意志で運命を切り開くことはできませんでしたが、彼の死がもたらした影響は、物語の中で重要な役割を果たしています。

この物語は、古代ギリシア人にとって、道徳的な教訓や英雄譚の一環として伝えられてきたと考えられます。オイオーノスの物語を通じて、古代の聴衆は、怒りや復讐がもたらす悲劇的な結果を学び、より良い選択をするための教訓を得ていたのかもしれません。彼の物語は、現代においても、人間の行動や感情について深く考えさせられるテーマを私たちに提供しています。


系図に関する情報は、原文には記載がありませんでした。

参考文献:
アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫（1953年）
ディオドロス『神代地誌』飯尾都人訳、龍渓書舎（1999年）
パウサニアス『ギリシア記』飯尾都人訳、龍渓書舎（1991年）
ピンダロス『祝勝歌集／断片選』内田次信訳、京都大学学術出版会（2001年）
* 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店（1960年）

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