オオアカゲラ

オオアカゲラ

オオアカゲラ（大赤啄木鳥、Dendrocopos leucotos）は、キツツキ目キツツキ科に分類される鳥の一種です。その名の通り、アカゲラよりも大型で、特徴的な姿をしています。

分布

オオアカゲラは、ヨーロッパ東部からアジアにかけて広く分布しています。具体的には、ヨーロッパ東部、スカンディナヴィア南部、コーカサス、シベリア南部、モンゴル、中国東北部、ウスリー地方、朝鮮半島、樺太、日本、台湾、中国東南部などで見られます。これらの地域には、以下の国々が含まれます。

アゼルバイジャン、アルバニア、アルメニア、イタリア、ウクライナ、エストニア、オーストリア、カザフスタン、ギリシャ、クロアチア、ジョージア、スウェーデン、スペイン、スロバキア、スロベニア、セルビア、大韓民国、チェコ、中華人民共和国、朝鮮民主主義人民共和国、ドイツ、トルコ、日本、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、フランス、ブルガリア、ベラルーシ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ポーランド、マケドニア、モルドバ、モンゴル、モンテネグロ、ラトビア、リトアニア、リヒテンシュタイン、ルーマニア、ロシア。

日本では、以下の4亜種が留鳥として周年生息しています。

エゾオオアカゲラ (D. l. subcirris)
オオアカゲラ (D. l. stejnegeri)
ナミエオオアカゲラ (D. l. namiyei)
オーストンオオアカゲラ (D. l. owstoni)

亜種

オオアカゲラには、地域によってさまざまな亜種が確認されています。以下に主な亜種を示します。

D. l. leucotos (Bechstein, 1803) - 基亜種: ヨーロッパ北部、中央部、東部からアジア北東部、朝鮮、樺太に分布。
D. l. lilfordi (Sharpe & Dresser, 1871) - ピレネー山脈からアムール川、コーカサスおよび南コーカサスに分布。
D. l. tangi (Cheng, 1956) - 中国西部（四川省）に分布。
D. l. subcirris (Stejneger, 1886) - 亜種エゾオオアカゲラ: 南千島、北海道に分布。
D. l. stejnegeri (Kuroda, 1921) - 亜種オオアカゲラ: 本州北部・中部に分布。
D. l. namiyei (Stejneger, 1886) - 亜種ナミエオオアカゲラ: 本州中部・南西部、四国、九州、済州島に分布。
D. l. takahashii (Kuroda & Mori, 1920) - 鬱陵島に分布。
D. l. owstoni (Ogawa, 1905) - 亜種オーストンオオアカゲラ: 奄美大島に分布。
D. l. fohkiensis (Buturlin, 1908) - 中国南東部の山地（福建省）に分布。
D. l. insularis (Gould, 1863) - 台湾に分布。

形態

オオアカゲラの全長は28cm（25-30cm）程度で、翼開長は49cmほどです。和名はこの種がアカゲラよりも大型であることに由来します。

体の上面は黒い羽毛で覆われ、白い横縞模様があります。体側面には黒い縦縞が入り、腹部や尾羽基部の下面（下尾筒）はやや赤みを帯びます。虹彩は暗赤色、嘴はやや長く、暗灰色をしています。

オスの成鳥は頭頂が赤い羽毛で覆われていますが、メスの成鳥は頭頂が黒い羽毛で覆われています。幼鳥は頭頂が暗赤色の羽毛で覆われています。

亜種による形態の違い

亜種エゾオオアカゲラ (D. l. subcirris): 上面の白い斑点がやや大きく、下面はより白色を帯びています。
*亜種オーストンオオアカゲラ (D. l. owstoni): 上面の黒色部が多く、白斑が少なく、下面は暗褐色を帯びています。

生態

オオアカゲラは、枯木の多い落葉広葉樹林や針葉樹林、針広混合林に生息します。群れは形成せず、単独またはペアで生活し、繁殖期には縄張りを形成します。

食性は雑食性で、昆虫（甲虫類の幼虫など）、節足動物、陸生貝類、果実、種子などを食べます。樹上で採食することが多いですが、冬季には地表で採食することもあります。繁殖期には主に昆虫を食べ、雛にも昆虫を与えます。冬季には果実や種子を主に食べます。

繁殖は、大木の幹に直径6-7cm、深さ約40cmの穴を空けた巣に、日本では4-5月に一度に3-5個の白色無斑の卵を産みます。雌雄交代で抱卵し、抱卵期間は11-16日です。雛は孵化してから24-28日で巣立ちます。

鳴き声は「キョッ、キョッ」と聞こえ、ドラミングの音はアカゲラよりも大きいとされています。

人間との関係

亜種オーストンオオアカゲラの亜種小名 owstoni は、この亜種の標本を提供したアラン・オーストンにちなんで名付けられました。

開発による生息地の破壊などが原因で、生息数が減少しています。日本では、亜種オーストンオオアカゲラが1971年に国の天然記念物に指定され、1993年には種の保存法の施行により国内希少野生動植物種に指定されています。環境省のレッドリストでは、絶滅危惧II類 (VU) に分類されています。

ギャラリー

オオアカゲラの画像

関連項目

アカゲラ属
鳥類天然記念物一覧
鳥類レッドリスト (環境省)

出典

参考文献
安部直哉 『山渓名前図鑑 野鳥の名前』、山と渓谷社、2008年、23頁。
五百沢日丸 『日本の鳥550 山野の鳥 増補改訂版』、文一総合出版、2004年、119頁。
黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科8 鳥類II』、平凡社、1986年、162頁。
高野伸二編 『山渓カラー名鑑 日本の野鳥 特装版』、山と渓谷社、1985年、376-377頁。
高野伸二 『フィールドガイド 日本の野鳥 増補改訂版』、日本野鳥の会、2007年、212-213頁。
中村登流監修 『原色ワイド図鑑4 鳥』、学習研究社、1984年、50頁。
真木広造、大西敏一 『日本の野鳥590』、平凡社、2000年、394頁。
『小学館の図鑑NEO 鳥』、小学館、2002年、78頁。

外部リンク
IUCN Red List - Home Page
BirdLife International 2008. Dendrocopos leucotos. In: IUCN 2009. 2009 IUCN Red List of Threatened Species.
文化庁
国指定文化財等データベース
環境省
国内希少野生動植物種
環境省 自然環境局 生物多様性センター
絶滅危惧種情報(動物)- オーストンオオアカゲラ -
* 天然記念物・オーストンオオアカゲラ子育て中　奄美大島 - YouTube（朝日新聞社提供、2017年5月10日公開）

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