オオシャコガイ

オオシャコガイ（Giant Clam）

オオシャコガイ（学名：Tridacna gigas）は、ザルガイ科に属する二枚貝の一種で、現生する二枚貝の中では最大の種として知られています。インド太平洋の熱帯海域に分布し、その巨大なサイズと独特な生態で人々の関心を集めています。

分布と生息地

オオシャコガイは、オーストラリア、西沙諸島、南沙諸島、インドネシア、マレーシア、マーシャル諸島、ミャンマー、パラオ、フィリピン、ソロモン諸島、東ティモールなどの海域に生息しています。かつては中国、クリスマス島、ココス諸島、南西諸島、ツバル、ベトナムなどにも分布していましたが、現在では絶滅した可能性があります。日本では、八重山諸島にわずかに生息していますが、個体数は少なく、大型の個体はほとんど見られません。数千年前には沖縄にも広く分布していたと考えられており、その名残として多くの殻が発見されています。

サンゴ礁の平らな砂地や、砕けたサンゴの上で生育し、水深20m程度の場所まで見られます。分布域はシャコガイの中で最も広く、島嶼部、ラグーン、裾礁などに生息しています。

形態

若い個体は他のシャコガイとの区別が難しいですが、成体になると殻を完全に閉じることができなくなり、茶色がかった黄色の外套膜の一部が見えるようになります。殻には4-5本の放射肋があり、放射肋数が6-7本であるヒレナシシャコガイと区別できます。殻は炭酸カルシウムで構成されており、季節の温度変化に敏感に反応して成長します。この特性を利用して、炭酸塩中の酸素同位体比やストロンチウムとカルシウムの比を分析することで、過去の海面水温を推定できる場合があります。

外套膜の縁には、数百から数千個ものピンホール状の眼点が存在します。これらの眼点は、光量の減少、光の方向の変化、物体の動きなどを感知することができ、危険を察知すると殻を部分的に閉じます。一部の眼点は色素を利用して光を調整し、画像を形成することも可能であると考えられています。

大きさ

オオシャコガイは、その名の通り非常に大きな二枚貝です。記録されている最大の個体は、殻長137cm、死後の体重230kgで、生きていた時は250kgと推定されています。この個体は1817年頃にスマトラ島北西部の海岸で発見され、その殻は現在、北アイルランドの博物館に展示されています。また、1956年には石垣島沖で、さらに重い個体が発見されました。殻長は115cmでしたが、死後の体重は333kg、生時の体重は340kgと推定されています。

生態

オオシャコガイは濾過摂食を行う一方で、共生している褐虫藻から必要な栄養の65-70％を得ています。この共生関係により、栄養分の少ないサンゴ礁の水中でも殻長1mまで成長することができます。外套膜の縁には褐虫藻が密集しており、シャコガイが供給する二酸化炭素、リン酸塩、硝酸塩を利用しています。

オオシャコガイは雌雄同体であり、1つの個体が卵と精子の両方を生産します。有性生殖を行い、自家受精は不可能ですが、同種の他個体がいれば繁殖することができます。自ら動くことができないため、精子と卵子を水中に放出します。産卵誘発物質と呼ばれる伝達物質は、精子と卵子の放出を同期させて受精を確実にする役割を果たします。産卵は満月、下弦の月、新月近くの満潮時に起こり、成体は一度に5億個以上の卵を放出することがあります。

人との関わり

オオシャコガイの殻は、置物や宝飾品、水盤などに加工されます。また、筋肉は各地で食用とされています。しかし、漁師による集中的な乱獲は大きな脅威となっており、特に高値で取引される大きな成体が狙われています。

俗説

オオシャコガイを含む大型の生物は、歴史的に様々な誤解を生み出してきました。オオシャコガイは殻を完全に閉じることができないにもかかわらず、ポリネシアの民話では猿の手が噛み切られたと語られていたり、マオリの伝説ではカヌーを襲ったとされていたりします。また、かつては西洋でもその危険性が話題にされ、人間を殺したこともあると信じられていました。しかし、実際には閉殻筋の収縮速度が遅く、殻を閉じる際には水を押し出す必要があるため、人間を挟むことはできません。

養殖と保全

オオシャコガイの乱獲が懸念されており、食用や観賞用としての取引のために野生個体が大幅に減少しています。そのため、ワシントン条約の付属書IIに掲載されており、加工品を含む国際取引が規制されています。パラオの研究施設や、オーストラリアのジェームズクック大学の研究施設などで養殖技術が開発され、太平洋諸島やフィリピンの養殖場の開発を支援しています。また、ハワイやミクロネシアに導入されたり、フィリピンに再導入されたりするなどの取り組みも行われています。

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