オオテンジクザメ

オオテンジクザメ (Nebrius ferrugineus)

オオテンジクザメ、学名Nebrius ferrugineusはテンジクザメ目コモリザメ科に属する唯一の現生種であり、その存在は主にインド太平洋の温暖な海域に確認されています。本種は通常70メートル以下の深さで生息していますが、非常に特徴的な円筒形の体型と平たい頭を持ち、また、尖った背鰭と鎌形の胸鰭を持つことで他のサメと区別されます。最大は約3.2メートルに達することが報告されています。

生息分布

オオテンジクザメはインド洋のクワズール・ナタール州から紅海、ペルシャ湾、そしてインド、マダガスカル、モーリシャス、チャゴス諸島、セイシェル、モルディブなどに広がっています。また、西太平洋域では南日本や中国沿岸、フィリピン、東南アジア、インドネシア、オーストラリア北岸にまで見ることができます。新生代中新世の時代には、ブラジル北部に生息していた痕跡も見つかっており、本種の分布範囲が過去にはもっと広かったことを意味します。

特徴と形態

オオテンジクザメは頑丈な円筒形の体型と、比較的平坦な頭を持っており、頭部には小さな目が位置しています。口は小さく、下顎の側には多くの歯が並んでいます。これにより、主にタコを捕食する能力を持ってるのです。また、皮膚の色は周囲に応じて変わる能力があり、環境に適応して色を変えることも可能です。

繁殖と育成

オオテンジクザメは無胎盤性胎生であり、卵食性の特性を持っています。雌は機能する卵巣を1つ持ち、2つの子宮を持ちます。交配は6月から8月にかけて行われ、出生時は40〜80センチメートルに成長します。産仔数は少量であり、通常1〜2匹が生まれます。

行動と生態

このサメは基本的に夜行性で、昼間は洞窟や岩棚で集まって休んでいることが多いですが、餌を求めて夜間に活発に動き回ります。主にタコを捕食しますが、他にもイカや小魚を食べることもあります。また、底をゆっくり泳ぎながら獲物を探し、見つけた際には筋肉質な咽頭を使って獲物を吸い込む独特の捕食方法を持っています。

人間との関係

オオテンジクザメは通常おとなしく、人が近づいても比較的無害です。ただし、驚かすと噛みつくことがあるため注意が必要です。一方で、国内外のエコツーリズムでも人気があり、水族館では人懐っこい性格から来る観察しやすい生態が特徴です。

保護状況

国際自然保護連合（IUCN）によれば、オオテンジクザメは危急種に指定されており、その背景には過剰漁獲や生息環境の悪化があります。特に商業漁業は本種に対して強い圧力をかけており、漁業による捕獲が懸念されています。さらに、本種は繁殖力が低く、また生息地の破壊や違法漁業の影響を受けやすいため、その保護が喫緊の課題となっています。

オオテンジクザメは、生態系における重要な役割を持つサメであり、今後の保護に向けた努力が必要です。

もう一度検索