オグズ語群

オグズ語群：広大な分布と共通の特徴を持つテュルク諸語の主要語群

オグズ語群は、テュルク諸語族の中でも主要な語群の一つであり、その話者数は1億5000万人以上にのぼります。地理的な分布は非常に広範囲に及び、西はバルカン半島から東は中国まで、ユーラシア大陸の広大な地域に広がっています。この語群は、トルコ語、アゼルバイジャン語、トルクメン語など、多くの言語を含み、その歴史と文化は、中央アジアから中東、ヨーロッパへと広がるテュルク諸民族の歴史と深く結びついています。

地理的分布と歴史

オグズ語群の主要な分布地域は、トルコ、アゼルバイジャン、トルクメニスタンなどをはじめ、イランのアゼルバイジャン地方、イラク北部、シリアなどにも及びます。8世紀頃にはアルタイ山脈付近から中央アジアへの移動を開始し、その後は中央アジア、ホラズムを経て、中東やヨーロッパへと勢力を拡大していきました。「オグズ」という名称は時代とともに変化し、「トルクメン」、「セルジューク」、「アゼルバイジャン」など、様々な名称で呼ばれるようになりました。オスマン・トルコ帝国も、オグズ系諸民族の子孫であると言えるでしょう。

主要言語の分類

オグズ語群は、地理的な位置や言語的な特徴に基づいて、大きく3つのグループに分類されています。

1. 西オグズ諸語: このグループには、トルコ語（トルコ語、オスマン語、ガガウズ語、バルカン・トルコ語、メスヘティア・トルコ語など）、アゼルバイジャン語（北部方言と南部方言）が含まれます。アゼルバイジャン語は、アゼルバイジャン共和国だけでなく、イランやイラク北部にも話者人口がいます。

2. 東オグズ諸語（トルクメン語群）: トルクメン語を代表とするグループです。トルクメン語は、トルクメニスタンが主な分布地域ですが、ホラサン地方やウズベキスタンにも話者が見られます。

3. 南オグズ諸語: このグループは、ガシュガーイー語、アゼルバイジャン語のソンゴル方言、アイナル語、アフシャール語など、比較的少数話者人口の言語が含まれます。

さらに、中国で話されるサラール語も、分布域の飛び地としてオグズ語群に分類されます。クリミア・タタール語やウルム語は、キプチャク語群に属するものの、オグズ語群からの強い影響を受けています。また、既に絶滅したペチェネグ語もオグズ語群に分類されると考えられていますが、文字資料が乏しいため、確実な分類は困難です。

言語学的特徴

オグズ語群の言語は、いくつかの共通の特徴を共有しており、それらが言語学的な分類の根拠となっています。これらの特徴の中には、他のテュルク諸語と共通のものと、オグズ語群固有のものがあります。

他のテュルク諸語と共有する特徴:

語頭に「h」の音を持たない（ハラジ語を除く）
具格を持たない（サハ語、ハラジ語を除く）

オグズ語群に固有の特徴:

前舌母音を伴う破裂音は濁音となる（例: gör- ← kör- 「見る」）
「[ɯ/u]」の後ろに「[q/ɣ]」が来ない（例: quru ← quruq 「乾く」、[sarɯ] ← [sarɯɣ] 「黄色」）
分詞「-gan-」が「-an-」に置き換わる

オグズ語群は、その広大な地理的分布、多様な言語、そして共通の言語学的特徴によって、テュルク諸語の中でも重要な位置を占めています。今後の研究によって、さらに詳細な言語学的知見が得られることが期待されます。

参考文献

Johanson, Lars and Csato, Eva Agnes (1998). The Turkic Languages. London: Routledge. ISBN 0-415-08200-5
Menges, Karl H. (1995). The Turkic Languages and Peoples. Wiesbaden: Harrassowitz. ISBN 3-447-03533-1

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