繁殖賞

繁殖賞について

繁殖賞は、公益社団法人日本動物園水族館協会（JAZA）が、加盟園館における飼育動物の繁殖成功を称えるために設けた表彰制度です。この賞は、特に日本国内で初めて繁殖に成功した動物を対象としており、動物園や水族館における繁殖技術の向上と種の保存への貢献を奨励することを目的としています。1956年に制定され、1965年に協会が社団法人化した後も、その重要性は変わらず、今日に至るまで継続されています。

繁殖の区分と条件

繁殖賞の対象となる繁殖は、以下の3つの区分に分けられます。

自然繁殖: 全く人の手を介さず、飼育環境下で自然に繁殖し、生育した個体。
人工繁殖: 親による哺乳を全く受けずに育った個体、または孵卵器を使用して卵を孵化させ、飼育した個体。
人工授精: 人の手によって受精が行われ、誕生した個体。

これらのいずれの場合も、繁殖した個体が6ヶ月以上生存することが受賞の条件となります。ただし、レオポンなどの一代雑種、家畜、家禽は繁殖賞の対象外です。また、有袋類の場合は、子供が育児嚢から初めて顔を出した日をもって繁殖が確認されたとみなされます。これらの厳しい条件を満たした上で、加盟施設からの自己申請に基づき、協会による厳正な審査が行われます。

受賞動物一覧

繁殖賞は、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、そして無脊椎動物と、非常に広範囲にわたる動物種を対象としています。以下に主な受賞動物とその繁殖に成功した園館、受賞年（または繁殖年）の一部をまとめました。詳細は、JAZAが公開している「繁殖表彰受賞動物一覧」を参照ください。

哺乳類

有袋目
アカカンガルー（野毛山動物園：1955年）
コアラ（東山動植物園：1986年）
ウォンバット（五月山動物園：1992年）
霊長目
チンパンジー（福岡市動植物園：1962年）
ニシローランドゴリラ（栗林公園動物園：1973年）
ボルネオオランウータン（上野動物園：1961年）
シロテテナガザル（栗林公園動物園：1961年）
食肉目
トラ（京都市動物園：1953年）
ヒョウ（野毛山動物園：1952年）
ジャガー（上野動物園：1962年）
チーター（南紀白浜アドベンチャーワールド：1982年）
ホッキョクグマ（旭山動物園：1974年）
ジャイアントパンダ（南紀白浜アドベンチャーワールド：2003年）
長鼻目
アジアゾウ（市原ぞうの国：2007年）
奇蹄目
グラントシマウマ（東山動植物園：1956年）
グレビーシマウマ（王子動物園：1957年）
クロサイ（王子動物園：1963年）
偶蹄目
マサイキリン（福岡市動物園：1957年）
カバ（上野動物園：1956年）
オカピ（よこはま動物園ズーラシア：2000年）
アメリカバイソン（上野動物園：1959年）

クジラ目
シャチ（鴨川シーワールド：1998年）
スナメリ（鳥羽水族館：1979年）

齧歯目
ビーバー（上野動物園：1965年）
カピバラ（平川動物公園：1977年）

食虫目
テンレック（上野動物園：1995年）

翼手目
マレーオオコウモリ（王子動物園：1953年）

兎形目
トウホクノウサギ（多摩動物公園：1980年）

異節目
オオアリクイ（野毛山動物園：1985年）
ナマケモノ（栗林公園動物園：1985年）

管歯目
ツチブタ（日本平動物園：1988年）

カイギュウ目
アメリカマナティ（沖縄美ら海水族館：1990年）

イワダヌキ目
イワハイラックス（京都市動物園：1970年）

ツパイ目
コモンツパイ（多摩動物公園：1968年）

鳥類

ダチョウ（浜松市動物園：1977年）
オシドリ（野毛山動物園：1956年）
コフラミンゴ（京都市動物園：1988年）
イヌワシ（円山動物園：1990年）
タンチョウ（上野動物園：1954年）
ヤツガシラ（京都市動物園：1992年）
カワセミ（豊橋総合動植物公園：1987年）
ライチョウ（市立大町山岳博物館：2000年）
ニジキジ（上野動物園：1956年）
カモメ（円山動物園：1986年）

爬虫類

アミメニシキヘビ（宝塚動植物園：1981年）
アカウミガメ（串本海中公園：1992年）
オオサンショウウオ（安佐動物公園：1979年）
ニホンイシガメ（姫路市立水族館：1987年）

魚類

イバラタツ（鴨川シーワールド：1978年）
サンマ（アクアマリンふくしま：1997年）
ロングノーズガー（神戸市立須磨海浜水族園：1977年）
ハマクマノミ（鴨川シーワールド：1973年）
ケツギョ（さいたま水族館：1986年）

無脊椎動物

アオサソリ（多摩動物公園：1988年）
オオベソオウムガイ（鳥羽水族館：1993年）
クラゲモエビ（江ノ島水族館：2009年）

繁殖賞の意義

繁殖賞は、動物園や水族館における動物の繁殖技術の向上を促し、種の保存に貢献する上で非常に重要な役割を果たしています。受賞施設は、その努力と成果を広く社会に認められることで、さらなる技術開発へのモチベーションを高めています。また、一般の人々にとっても、繁殖賞を通じて、動物たちの生命の神秘と、それを支える飼育員たちの献身的な努力を再認識する機会となっています。

関連情報

動物園: 様々な動物を飼育・展示する施設。
水族館: 主に水生生物を飼育・展示する施設。
日本動物園水族館協会: 日本国内の動物園・水族館が加盟する団体。
ブリーディングローン: 動物の繁殖を目的とした動物の貸借制度。

外部リンク

JAZA公式サイト: 日本動物園水族館協会の公式ウェブサイト。
* 種の保存・自然保護: JAZAによる種の保存と自然保護に関する取り組み。

繁殖賞は、動物園や水族館における繁殖技術の進歩と、生物多様性の保全に不可欠な取り組みを称える、重要な賞です。この賞を通じて、より多くの人々が動物たちの生命の尊さに触れ、種の保存に対する意識を高めることが期待されます。

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