オットー・ルーニング

オットー・ルーニングは、1900年6月15日に生まれ、1996年9月2日にその生涯を閉じた、アメリカ合衆国の重要な作曲家です。彼は特に電子音楽のパイオニアとして知られており、また、アメリカ現代音楽の発展においても中心的な役割を担いました。

ドイツ系の家庭に生まれたルーニングは、ウィスコンシン州ミルウォーキーで生を受けました。音楽家系の環境で育ち、祖父はテノール歌手、父はピアニスト、作曲家、指揮者でした。音楽教育を受けるため、スイスのチューリヒへ渡り、高名な作曲家フェルッチョ・ブゾーニとフィリップ・ヤルナッハに作曲を師事します。この時期、1918年には師であるブゾーニから、電子機器を活用した作曲の将来性について示唆を得たことが、後のキャリアに影響を与えたと考えられます。

1920年にアメリカに帰国したルーニングは、作曲家としての活動と並行して、教育者としても才能を発揮しました。アリゾナ大学、コロンビア大学、そしてジュリアード音楽院といった著名な教育機関で教鞭を執り、多くの後進を指導しました。

ルーニングの業績の中でも特筆すべきは、電子音楽の分野における先駆的な取り組みです。1950年代初頭、コロンビア大学にて、同じく作曲家のウラジミール・ウサシェフスキーと共に、電子楽器や磁気テープを用いた新たな音楽表現の研究に没頭しました。この共同研究は、当時まだ黎明期にあったテープ音楽というジャンルを確立する上で極めて重要な役割を果たしました。彼らの研究成果は、その後の電子音楽の発展に道筋をつけました。さらに、1959年には、両者が中心となってコロンビア-プリンストン電子音楽センター（現在のコロンビア大学コンピュータ音楽センター）を設立し、電子音楽研究・制作の拠点を作り上げました。

ルーニングは、作曲や教育活動に加え、アメリカ現代音楽界の振興にも力を注ぎました。特に、アメリカ音楽センターの設立に尽力したメンバーの一人であり、アーロン・コープランド、マリオン・バウアー、ハワード・ハンソン、ハリソン・カール、クインシー・ポーターといった同時代の著名な作曲家たちと共にこの組織を立ち上げました。初代会長として、アメリカの現代音楽作品の普及と作曲家の地位向上を目指し、精力的な活動を展開しました。その功績は、今日のアメリカ音楽シーンの礎を築いたものとして高く評価されています。

ルーニングの創作活動は電子音楽に留まりませんでした。フルートなどの管楽器のための作品や、様々な編成の室内楽曲、声楽曲など、幅広いジャンルの作品を残しています。彼の名を一躍有名にした初期のテープ音楽作品は、現在では歴史的な資料として扱われることが多く、コンサートで演奏される機会は稀です。しかしながら、「叙情的光景」（オーボエと弦楽器のための）や「伝説曲」（フルートと弦楽器のための）といった、より伝統的な響きを持つ作品は、現代でも小品として演奏される機会があります。また、詩人エミリー・ディキンソン、ジョージ・ゴードン・バイロン、ウィリアム・ブレイクらの詩に付曲した初期の歌曲も、その文学性と音楽性の融合において特筆すべき作品として知られています。

オットー・ルーニングは、電子音楽の道を切り開き、教育者として多くの音楽家を育成し、そしてアメリカ現代音楽の組織的基盤を築いた、多才で影響力の大きな作曲家でした。彼の残した遺産は、今なお音楽史の中に確固たる位置を占めています。

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