オボック

オボックは、アデン湾に面したタジュラ湾の北岸に位置するジブチの港町です。面積は小さいながらもオボック州の州都であり、2024年の国勢調査では人口20,152人を数えます。この町は、19世紀にフランスが東アフリカに進出する際の拠点となりました。

フランス租借地時代

19世紀、大英帝国はスエズ運河開通を見据え、紅海からアデン湾にかけての要所を次々と確保しました。一方、フランスはアルベール・ロッシュの進言により、1857年になってエチオピアとの通商に関心を抱き始めます。

フランスは、アデン駐在大使アンリ・ランベールにオボック港の獲得を指示しますが、ランベールの暗殺により計画は頓挫します。しかし、1861年にフランス軍がコーチシナ方面への進出を開始すると、再びオボックを拠点とする動きが活発化しました。1862年3月11日、フランスは地元のアファル人首長との間で契約を結び、オボックに初の租借地を設立します。契約額は約1万ターラーでした。しかし、フランスはオボックにわずか1人の守衛を配置するのみで、積極的な活用は行いませんでした。

転機が訪れたのは1880年代です。フランス軍がトンキンへの侵攻を強める中、アデン港でフランス船への給炭が拒否される事件が発生します。また、マフディー戦争を背景に、イギリスがエジプト政府への関与を深め、東アフリカにおける列強との競合姿勢を強めました。この頃、オボックに着任した若き司令官レオン・ラギャルドは、本国からの経済支援を取り付け、植民地の改革を実行しました。

ジブチへの移行

1884年から1888年にかけて、ラギャルドは後のエチオピア皇帝となるメネリク2世との関係を構築し、タジュラ湾に面したジブチの土地を獲得します。地理的に不利な位置にあったオボックは、次第にその役割をジブチに奪われ、1892年には主要港の座を完全に明け渡すこととなりました。1888年、オボックの人口は2,000人に達しましたが、1896年にフランス領ソマリが確立された当時の首都ジブチの人口は、それをはるかに上回る5,000人を数えました。

その他

植民地時代、オボックでは独自の切手が発行され、学校も運営されていました。

現在のオボック

2002年末には、数千隻のアメリカ艦船がイラク侵攻のためオボック港に寄港しました。現在、オボックには空港が設置され、ジブチ市との間にはフェリーが往復しています。近隣にはマングローブ林も生育しており、自然豊かな景観を楽しむことができます。

オボックは、フランス植民地時代の歴史を今に伝える港町として、静かにその存在を保っています。

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