オルガンソナタ第1番 (エルガー)

オルガンソナタ第1番 ト長調 作品28は、イングランドの作曲家エドワード・エルガーがオルガンのために作曲した作品です。このソナタは、彼のオルガン音楽における重要な位置を占めています。

作曲の経緯と初演

作品は1895年、ウスター大聖堂のオルガニストであったヒュー・ブレアからの依頼により作曲されました。同年7月8日に大聖堂を訪れるアメリカのオルガニストたちのために、新しい作品の初演を望んだブレアがエルガーに作曲を託したのです。エルガー自身、オルガニストであった父の影響もあり、幼少期からオルガンに親しみ、演奏経験も持っていました。この背景から、彼がオルガンの特性を熟知していたことは明らかです。

作曲は『3つのバイエルン舞曲』を完成させた後すぐに取り掛かられましたが、依頼から初演まで約2ヶ月あったにもかかわらず、作業は難航しました。結局、楽譜がブレアに手渡されたのは初演のわずか5日前、7月3日のことでした。十分な準備時間が取れなかったブレアによる7月8日の初演は、期待された成功を収めることはありませんでした。初演を聴いていたローザ・バーリーは、ブレアの演奏が「哀れなエルガーの作品をひどく台無しにしてしまった」と評し、その原因が曲の不勉強か、行事への軽率な態度にあると厳しく書き記しています。
楽譜は後にドイツのブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から出版されました。

管弦楽編曲の歴史

エルガーの死後、1940年代になると、ブライトコプフ社からこの作品の権利を取得したBritish & Continental Music Agencies社は、管弦楽への編曲を企画します。作曲者の娘や指揮者エイドリアン・ボールトに相談した結果、ゴードン・ジェイコブに編曲が委嘱されました。ジェイコブによるオーケストラ版は、1947年6月4日にボールト指揮で初演されます。
この編曲版はその後しばらく演奏される機会が少なかったものの、1988年にヴァーノン・ハンドリー指揮ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団による録音で再び注目を集めました。この録音は「ジェイコブの思いやりに満ちた編曲により、この版はエルガーの交響曲第0番といえよう」と紹介されましたが、アンソニー・ペインが補筆完成した交響曲第3番ほどは頻繁に録音される機会には恵まれていません。2007年にはリチャード・ヒコックス指揮BBCウェールズ交響楽団による録音もリリースされています。なお、ジェイコブ版の存在を知らずに、ジョン・モリソン（エルガー協会メンバー）が独自に管弦楽編曲を作成した版も存在します。

献呈と関連作品

このソナタは、エルガーの活動を支援したチャールズ・スウィナートン・ヒープに献呈されています。また、アイヴァー・アトキンスは、エルガーがブラスバンドのために作曲した『セヴァーン組曲』を編曲し、オルガンソナタ第2番としています。

演奏時間

演奏には通常、26分から30分程度を要します。

楽曲構成

作品は以下の4つの楽章で構成されています。当初の構想では、第2楽章と第3楽章の順序が逆になっていたことが知られています。

第1楽章 アレグロ・マエストーソ

ト長調、3/4拍子によるソナタ形式。序奏はなく、堂々とした第1主題の提示で開始されます。この主題には、エルガーのカンタータ『黒騎士』の冒頭主題やヘンデルのオラトリオ『メサイア』との類似性が指摘されることがあります。経過的な主題を挟み、9/8拍子に変わって軽快な第2主題が現れます。展開部では再び3/4拍子に戻り、主題が対位法的に展開されます。ト短調で新しい素材も提示されますが、すぐに再現部へと移行します。第1主題、経過主題、第2主題が再現された後、力強いコーダを経て、第1主題の響きの中に壮大に楽章を閉じます。

第2楽章 アレグレット

ト短調、4/8拍子。三部形式による間奏曲的な性格を持ち、全曲中最初に完成された楽章です。静かに下降する高音の装飾的な音型に続き、短いフレーズから成る主要主題が現れます。この主題は楽章が進むにつれてその全容を現していきます。再び落ち着いた雰囲気になると、速度が倍になり中間部に入ります。ハ長調の中間部では、中声部で温かみのある主題が歌われます。主要主題が戻った後、静かに弱音へと収束していき、次の楽章へアタッカで連結されます。

第3楽章 アンダンティーノ・エスプレッシーヴォ

変ロ長調、2/4拍子。後のヴァイオリン協奏曲や交響曲の緩徐楽章を予感させる、非常に美しい抒情的な音楽が展開されます。この楽章の主要主題は、エルガーが書き溜めていたスケッチブックの素材から取られました。変ロ長調を導く短い導入の後、息の長い主要旋律が歌われます。嬰ヘ長調へと転調すると、静かで穏やかな別の旋律が奏でられ、これが次第に熱を帯び、フォルテッシモのクライマックスを形成します。その後、静けさを取り戻し、最初の主要旋律とこのクライマックス主題が共に変ロ長調で再現されます。最後は両主題を組み合わせたコーダとなり、静かに終わりを迎えます。エルガーの初期構想には、主要旋律によるクライマックスを含む部分が含まれていましたが、これは完成稿では削除されました。

第4楽章 プレスト （コモド）

ト短調、2/4拍子によるソナタ形式。音楽評論家マイケル・ケネディが、演奏するにはオルガニストに強靭な精神力と体力が必要だと考えた、活気あふれる楽章です。せわしない性格の第1主題で開始されます。対照的に、第2主題は軽快な歩みを見せます。このまま大きく盛り上がりを築いた後、静かになり展開部へと入ります。展開部の冒頭では、驚くべきことに第3楽章の主題が引用されます。展開部では主に第1主題のリズムなどが扱われますが、全体に落ち着いたまま進行し、再現部となります。再現部ではト短調の第1主題、そしてト長調となった第2主題が順次再現され、興奮を高めていきます。高らかに奏される旋律がコーダの開始を告げます。この旋律も、第3楽章の主題を拡大したものです。第1主題と第2主題を取り込んだ2ページにわたるコーダを一気に駆け抜け、朗々と響き渡るト音の響きの中に全曲の幕を下ろします。

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