オルドス市

オルドス市：歴史と変遷、そして未来への挑戦

オルドス市は、中国内モンゴル自治区の南西部に位置する地級市です。黄河が大きく屈曲するオルドス高原に位置し、古くから遊牧民族の生活圏として、また交通の要衝として歴史的に重要な役割を担ってきました。この地は、かつて匈奴と漢が争奪した地であり、15世紀にはモンゴルのオルドス部が移住、その名が地名となりました。

行政区画

オルドス市は、2つの市轄区と7つの旗（ホショー）を管轄しています。

市轄区

ヒヤバグシ区（康巴什区）
東勝区

旗（ホショー）

ジュンガル旗（準格爾旗）
ダラト旗（達拉特旗）
ハンギン旗（杭錦旗）
オトク旗（鄂托克旗）
オトク前旗（鄂托克前旗）
ウーシン旗（烏審旗）
エジンホロ旗（伊金霍洛旗）

歴史

オルドス市の歴史は、遊牧の地としての歴史と、近代以降の変遷が複雑に絡み合っています。

前史

オルドス市域は、古くから遊牧民にとって好適な地でした。その位置から、モンゴル高原と華北を結ぶ交通の要衝としても重要であり、匈奴と秦・漢が争奪した地でもありました。後漢時代には、匈奴の呼韓邪単于が王庭を置いたとされています。15世紀にモンゴルのオルドス部が移住したことで、「オルドス」という地名が定着しました。オルドスとはモンゴル語・テュルク語で「宮廷」を意味し、チンギス・ハーンの霊廟を奉祀したことに由来します。

清代から現代へ

17世紀にオルドス部は清に服属し、清は盟旗制を導入。オルドス部を7つの旗に分け、各旗長をオルドス王家の後裔としました。この7旗がイフ・ジョー盟を構成し、辛亥革命後には綏遠省に編入されました。満州事変後、オルドスは徳王の自治独立運動に参加、蒙古連合自治政府の傘下に入りました。国共内戦後、中華人民共和国のもとで綏遠省が廃止され、イフ・ジョー盟は内モンゴル自治区に編入されました。2001年にイフ・ジョー盟は地級市オルドス市となり、現在に至ります。

年表

1949年10月1日：中華人民共和国綏遠省イフ・ジョー盟成立
1949年12月8日：イフ・ジョー盟が民族自治区に移行、イフ・ジョー盟モンゴル族自治区となる
1949年12月21日：東勝県を編入、ダラト旗組織訓練処がダラト旗に編入、桃力民弁事処がオトク旗・ハンギン旗に分割編入
1950年4月7日：陝西省の一部から通格朗区、郡王旗の一部からダルグート区が発足
1950年6月1日：山西省の一部から十里長灘区が発足
1951年11月20日：陝西省の一部がオトク旗に編入
1952年2月：寧夏省の一部がオトク旗に編入
1952年10月21日：通格朗区・ダルグート区がジャサク旗に編入、十里長灘区がジュンガル旗に編入
1953年9月15日：集寧専区包頭県の一部がダラト旗に編入
1953年9月28日：ハンギン旗の一部と陝壩専区米倉県が合併し陝壩専区ハンギン後旗、ダラト旗の一部と陝壩専区晏江県が合併し陝壩専区ダラト後旗となる
1954年1月28日：綏遠省の内モンゴル自治区への編入により、内モンゴル自治区イフ・ジョー盟となる
1954年6月：平地泉行政区サラチ県の一部がダラト旗に編入
1955年1月10日：ジュンガル旗の一部が平地泉行政区サラチ県に編入
1956年6月1日：陝西省の一部がウーシン旗に編入
1958年11月21日：郡王旗・ジャサク旗が合併し、エジンホロ旗が発足
1960年1月7日：バヤンノール盟磴口県の一部がオトク旗に編入
1961年7月9日：オトク旗の一部が分立し、海勃湾市が発足
1975年8月30日：海勃湾市がバヤンノール盟ウダ市と合併し、地級市の烏海市となる
1980年8月12日：オトク旗の一部が分立し、オトク前旗が発足
1983年10月10日：東勝県が市制施行し、東勝市となる
2001年2月26日：イフ・ジョー盟が地級市のオルドス市に昇格、東勝市が区制施行し、東勝区となる
2003年：エジンホロ旗の一部が東勝区に編入
2016年6月8日：東勝区の一部が分立し、ヒヤバグシ区が発足

経済

オルドス市は、豊富な資源に恵まれた都市です。特に石炭の埋蔵量は莫大で、中国有数の産炭地として知られています。石炭バブル期には急速な経済成長を遂げましたが、その後の価格暴落により大きな打撃を受けました。近年では、天然ガス、風力発電、太陽光発電などの再生可能エネルギー資源の開発にも力を入れています。

産業

オルドス市の主な産業は以下の通りです。

石炭：莫大な埋蔵量を誇り、市の経済を支える基幹産業。
天然ガス：確認埋蔵量は中国全体の3分の1を占める。
カシミア：特産の山羊から取れるカシミアは、世界有数の品質を誇る。
風力発電、太陽光発電：再生可能エネルギーへの転換を進めている。

経済成長とバブル崩壊

2000年代から石炭生産が本格化し、オルドス市は急速な経済成長を遂げました。しかし、石炭価格の暴落により、2010年代にはゴーストタウン化が問題視され、大きな経済危機に直面しました。特に康巴什新区はゴーストタウンの象徴として世界的に報道されました。しかし、現在では都市開発も進み、企業誘致も活発化しています。

新たな産業への挑戦

石炭依存からの脱却を目指し、オルドス市は新たな産業の育成に力を入れています。特に、再生可能エネルギーや仮想通貨マイニングなどの分野に注目が集まっています。

仮想通貨のマイニング

オルドス市では、安価な電力供給を利用した仮想通貨マイニングが盛んに行われました。しかし、2017年頃から中国政府による規制が強化され、マイニング業者は海外への移転を余儀なくされています。

交通

オルドス市には、オルドス・エジンホロ空港があり、G109国道、G210国道が市内を走っています。

文化・観光

オルドス国際サーキット
オルドス博物館
チンギス・ハーン陵

著名な出身者

楊晶（政治家）
巴特爾（バスケットボール選手）
楊海英（文化人類学者）
* 楊魏玲花（歌手）

まとめ

オルドス市は、豊かな資源と歴史を持つ都市です。過去には急速な経済成長とバブル崩壊を経験しましたが、現在では新たな産業への転換を目指し、未来への挑戦を続けています。今後も、オルドス市の動向に注目が集まるでしょう。

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