呼韓邪単于

呼韓邪単于（こかんやぜんう）

呼韓邪単于（紀元前？ - 紀元前31年）は、前漢時代の匈奴の単于です。虚閭権渠単于の子で、郅支単于の弟にあたります。呼韓邪単于は単于号であり、姓は攣鞮氏、名は稽侯狦といいます。漢に降伏し、王昭君を妻としたことで広く知られています。

生涯

父である虚閭権渠単于が紀元前61年に亡くなると、右賢王が握衍朐鞮単于として即位しました。呼韓邪単于は、妻の父である烏禅幕のもとに身を寄せます。烏禅幕は烏孫と康居の間の小国でしたが、匈奴に服属しており、日逐王の姉を妻としていました。しかし、日逐王は握衍朐鞮単于と不仲であり、数万騎を率いて漢に降伏し、帰徳侯に封じられました。握衍朐鞮単于はこれに怒り、烏禅幕の命乞いを無視して日逐王の弟たちを殺害しました。また、握衍朐鞮単于の太子（左賢王）が左地（東方）の貴人たちを讒言したため、烏禅幕と左地の貴人たちは呼韓邪単于を単于に擁立し、握衍朐鞮単于と対立しました。紀元前59年、握衍朐鞮単于は敗北し、右賢王に見放され、自殺しました。

握衍朐鞮単于の死後、匈奴では内紛が激化し、屠耆単于、烏藉単于、呼掲単于、車犁単于が相次いで自立し、五単于が乱立する事態となりました。さらに、呼韓邪単于の兄である呼屠吾斯も郅支骨都侯単于（郅支単于）として自立し、呼韓邪単于を破りました。敗れた呼韓邪単于は、配下の左伊秩訾王の進言を受け入れ、漢に臣下として助けを求めることにしました。紀元前53年、子の銖婁渠堂を漢に入朝させました。郅支単于も同様に漢に助けを求め、子を入朝させました。

紀元前51年、呼韓邪単于は自ら五原の要塞を訪れ、漢に入朝することを願い出ました。漢の宣帝は甘泉宮で呼韓邪単于と会見し、単于を諸侯王よりも上位に位置づけ、臣と称することを許し、中国の冠や衣服、黄金の璽などを贈り、兵と食料を提供して呼韓邪単于を支援しました。

郅支単于は、呼韓邪単于が漢に入朝したことを知ると、兵力が弱体化し、帰還できないと判断し、右地（西方）を攻撃しました。しかし、烏孫は漢が呼韓邪単于を受け入れたことを知ると、郅支単于を拒否しました。

漢の元帝の時代になっても、漢は呼韓邪単于に食料を供給しましたが、漢の使者を殺害した郅支単于を討つように促しました。呼韓邪単于は北へ帰る際、同行していた車騎都尉韓昌、光禄大夫張猛と、月氏王の頭蓋骨で作った盃で「今より以降、漢と匈奴は一家となり、代々互いに欺き攻め合うことのないように」と盟約を交わしました。呼韓邪単于が北へ帰還すると、人々は彼のもとに帰順し、匈奴は平定されました。

紀元前36年、郅支単于は康居王と結んでいましたが、西域都護甘延寿と副校尉陳湯によって討伐されました。呼韓邪単于はこれを喜び、漢への畏敬の念を新たにしました。紀元前33年、再び入朝し、漢の婿となることを願い出ました。元帝は後宮の女性である王昭君を閼氏（えんし：妻）として与えました。呼韓邪単于は漢に北辺の防備を撤廃することを提案しましたが、これは却下されました。

呼韓邪単于は在位28年、紀元前31年に亡くなりました。跡を継いで、子の雕陶莫皋（復株累若鞮単于）が即位しました。

妻子

閼氏（えんし：妻）
顓渠閼氏…呼衍王の娘
大閼氏…呼衍王の娘、顓渠閼氏の妹
寧胡閼氏（王昭君）
屠耆閼氏
第五閼氏
子
復株累若鞮単于（雕陶莫皋）…大閼氏の子
捜諧若鞮単于（且麋胥）…大閼氏の子
車牙若鞮単于（且莫車）…顓渠閼氏の子
烏珠留若鞮単于（嚢知牙斯）…顓渠閼氏の子
楽…大閼氏の子
烏累若鞮単于（咸）…大閼氏の子
呼都而尸道皋若鞮単于（輿）…第五閼氏の子
盧渾…屠耆閼氏の子
右日逐王（伊屠智牙師）…寧胡閼氏の子
銖婁渠堂
他10数人

参考文献

* 班固著『漢書』巻94匈奴伝

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