オルド・バリク

オルド・バリク（Ordu-Baliq）

オルド・バリクは、8世紀にウイグル可汗国によって建設された都城です。現在のモンゴル国、オルホン川の西岸に位置していました。この都市は、ウイグル可汗国の第3代君主である牟羽可汗（在位：759年 - 779年）によって建設され、同国の政治・文化の中心地として栄えました。

名称

当時の中国（唐）では、オルド・バリクは回紇単于城、卜古罕（ブグハン）城、窩魯朶（オルダ）城などと呼ばれていました。一方、オルド・バリクという名称はイスラーム史料に由来し、「オルド」は「可汗庭（宮殿）」、「バリク」は「都城」を意味します。13世紀の歴史家アラー・ウッディーン・ジュヴァイニーは『世界征服者の歴史』において、「オルコン河畔に都市と宮殿の遺址があり、往時これをオルド・バリク（宮殿の都市）と呼び、今はマウ・バリク（悪い不幸な都市）と呼んでいる。」と記しており、当時すでに廃墟となっていたことが伺えます。

現在では、この遺跡はハル・バルガス、ハラ（カラ）・バルガスン（廃墟の都市、黒き都市）などと呼ばれています。

歴史

オルド・バリクは、ウイグル可汗国の最盛期を築いた牟羽可汗によって建設されました。彼は、先代の葛勒可汗（在位：747年 - 759年）が築いたバイ・バリクを凌駕する都城を目指し、オルホン川西岸に新たな都を築きました。しかし、崇徳可汗（在位：821年 - 824年）の死後、ウイグル可汗国は内乱と天災に見舞われ、次第に衰退していきます。

そして、最後の㕎馺可汗（在位：839年 - 840年）とその宰相である掘羅勿（キュレビル）は、将軍の句録莫賀（キュリュグ・バガ）と黠戛斯（キルギス）軍の侵攻を受け殺害され、オルド・バリクも破壊されました。これにより、ウイグル可汗国は滅亡し、オルド・バリクも歴史の舞台から姿を消すことになりました。

規模

オルド・バリクの中心部には内城址があり、東西に長い長方形をしています。その規模は、四隅の高い地点で測ると約420メートル×335メートルで、城壁の高さは約7メートル、東南部の突出部分は12～13メートルにも達します。内城の周囲を囲む外城は、約5キロメートル×5キロメートルという広大な範囲に及び、城壁の高さは約10メートル、厚さは7～10メートルです。

また、城内からは唐代に典型的な蓮華文が施された軒丸瓦が発見されており、中国人職人が建設に関与していた可能性が指摘されています。このことは、当時のウイグル可汗国が唐との交流を深めていたことを示す証拠の一つと言えるでしょう。

現在

現在、オルド・バリクはハラ・バルガスン遺跡としてその遺構が残されており、中央ユーラシア史における重要な遺跡として注目されています。その壮大な規模は、かつてのウイグル可汗国の繁栄を物語るとともに、歴史の変遷を静かに伝えています。

参考資料

『旧唐書』（列伝第一百四十五 迴紇）
『新唐書』（列伝第一百四十二上 回鶻上、列伝第一百四十二下 回鶻下）
コンスタンティン・ムラジャ・ドーソン（訳注：佐口透）『モンゴル帝国史1』（平凡社、1976年）
小松久男『中央ユーラシア史』（山川出版社、2005年、ISBN 463441340X）
森安孝夫『興亡の世界史05 シルクロードと唐帝国』（講談社、2007年、ISBN 9784062807050）

関連項目

ウイグル
カラコルム
カラ・バルガスン遺跡
ソグド人
バイ・バリク
* ウテュケン山

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