オレネキアン

オレネキアン（Olenekian）

オレネキアンは前期三畳紀にあたる地質時代で、約2億5120万年前から2億4720万年前までの期間を指します。この時代の名称は、ロシアのオレニョーク川盆地に由来し、この地域が模式地として位置づけられています。オレネキアンという名称には「オレニョーク階」や「オレネキアン階」といった層序名が存在しますが、これらは地質層を区別するために使われるもので、時代そのものを示すものではありません。層序名と時代名は互いに対を成す関係にあります。

層序学的定義

オレネキアン階は1956年にロシアの層序学者によって初めて学術文献に登場し、地質学的な時代分類において重要な役割を果たしています。かつては、オレネキアン期の後期がカナダのエレスメア島を模式地とするスパシアン期に、前期オレネキアンと後期インドゥアンに相当する時期がヒマラヤを代表するナンマリアン期とされていました。しかし、後にスパシアン期はオレネキアンの亜期に含まれるとされ、ナンマリアン期という呼称は現在では用いられていません。

オレネキアンの生物

この時期の生物は、ペルム紀末の大量絶滅からの回復過程にありました。オレネキアンの植物相は、初めにプレウロメイアを含むヒカゲノカズラ綱が支配的でしたが、次第に裸子植物とシダ植物が主流となりました。この変化は気温や降水量の世界的な変動によるものであり、裸子植物の球果植物門は中生代を通じて支配的な存在となります。

陸上脊椎動物の進化もこの時代の大きな特徴であり、主竜類が主竜形類から進化してきました。代表的な捕食者としては、エリスロスクスのような生物が存在しました。海洋環境では、マイクロバイアライトの礁が普遍的に形成され、これは大量絶滅の影響で造礁性の後生動物との競争がなかったためと考えられています。オレネキアン期でも一定の環境条件下で後生動物による礁が一時的に形成されましたが、主にアンモナイトやコノドントが多様性を増しました。

条鰭綱は前の大量絶滅からの影響をほとんど受けず、幅広い属がインドゥアン期とオレネキアン期にわたって世界各地に分布していました。特にアファネランマやワントゾサウルスといった海生の分椎目は、広範な地理的範囲で発見されています。化石は、グリーンランド、スピッツベルゲン、パキスタン、マダガスカルなどの地域から出土しています。

オレネキアン期には、最初の海生爬虫類も現れました。中国では約2億4800万年前の地層からカートリンカスが発見され、これは後の魚竜と陸生爬虫類を繋ぐ重要な存在として位置づけられています。

また、オレネキアン期はスミシアンとスパシアンの境界において絶滅イベントが発生しました。この原因はシベリア・トラップの大規模な噴火であり、これにより多くの生物群が絶滅しました。特にアンモナイトやコノドントといった重要な海洋生物に対する影響は大きかったのです。

最後に、日本においては島根県の鹿足層群日原累層から多様なコノドント化石が発見されており、オレネキアン階からノーリアン階にかけての時間的範囲を持つ化石が見つかっています。これらの化石は当時の生物多様性を知るうえで貴重な手がかりとなっています。

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