オークランド諸島

オークランド諸島：亜南極の秘境

オークランド諸島は、ニュージーランド南島の南方約450kmに位置する島嶼群であり、その総面積は625平方キロメートルに及びます。かつてはアザラシ猟や捕鯨の拠点として利用され、定住の試みも行われましたが、現在は無人島となっています。この島々は、「ニュージーランドの亜南極諸島」として世界遺産（自然遺産）に登録されており、その独特な自然環境と生態系が保護されています。

地理

オークランド諸島は、南緯50度30分から50度55分、東経165度50分から166度20分の範囲に位置しています。主な島嶼は以下の通りです。

オークランド島 (Auckland Island)
アダムズ島 (Adams Island)
エンダービー島 (Enderby Island)
ディサポイントメント島 (Disappointment Island)
アーウィング島 (Ewing Island)
ローズ島 (Rose Island)
ドゥンダス島 (Dundas Island)
グリーン島 (Green Island)

最大の島はオークランド島で、面積は510平方キロメートルです。オークランド島の南には、狭い海峡を隔ててアダムズ島があり、かつては一つの火山の外輪山を形成していました。二つの島に挟まれたカーンリー・ハーバーは、死火山の火口の残骸です。オークランド島の北西10kmにはディサポイントメント島、オークランド島北端から北方1kmにはエンダービー島が位置しています。

地質

オークランド諸島は火山性の地形であり、1200万年前の中新世に活動していた2つの火山が、その後の浸食によって形成されました。古い時代の花崗岩を含む火山岩や、1億年ほど前の化石を含んだ堆積岩も見られます。

主島であるオークランド島は、切り立った崖と荒涼とした地形が特徴で、断崖の高さは600mを超える場所もあります。主要な山としては、カバーン峰（650m）、レイナル山（635m）、デュルビル山（630m）などがあります。オークランド島には多くの入江があり、特に北端のポート・ロスには深く入り込んだ入江が存在します。諸島第二の島であるアダムズ島には、高さ660mのディック山がそびえています。

歴史

ポリネシア人の居住

オークランド諸島に最初に到達したのは、ポリネシア人の航海者たちでした。エンダービー島からは13世紀ごろのものと思われる住居の遺跡が発見されており、これは現在見つかっているポリネシア人の住居遺跡としては最南端に位置します。

イギリスによる発見と領有

1806年、イギリスのエンダービー社の捕鯨船によってオークランド諸島が「発見」されました。当時の島には住民はおらず、船長のアブラハム・ブリストーは、初代オークランド男爵に敬意を表して「オークランド卿の（諸島）」と命名しました。その後、諸島はアザラシ猟・捕鯨の基地として利用され、一時的な拠点が築かれました。1839年には探検家のデュモン・デュルビル、ジェームズ・クラーク・ロスがオークランド諸島を訪れています。

定住の試み

1842年、チャタム諸島からマオリ族の一団が移住し、アザラシ猟と亜麻栽培によって20年ほど定住しました。1846年には、イギリスの実業家チャールズ・エンダービーが、農業と捕鯨を基盤とするコミュニティを建設しようと試みましたが、わずか2年で失敗に終わりました。1863年、イギリス議会はオークランド諸島をニュージーランドの領域に含めました。

オークランド諸島海難史

オークランド諸島の沿岸は岩が多いため、多くの船が難破しました。1864年にはグラフトン号が、1866年にはジェネラル・グラント号が遭難し、ジェネラル・グラント号の遭難はニュージーランドで最も有名な海難事故として知られています。20世紀に入ってからも海難事故は絶えず、漂流者向けの緊急避難倉庫が設立されました。

科学的調査と保護

1907年にはニュージーランドによる亜南極諸島科学調査が行われ、第二次世界大戦中には測候所が設置されました。1998年には世界遺産に登録され、現在は科学者による調査が行われています。エンダービー島とオークランド島への観光旅行は限定的に許可されています。

生態系

オークランド諸島は、ニュージーランドアシカ、キンメペンギン、アホウドリ類など、貴重な動植物が生息する場所です。ロス湾はミナミセミクジラの主な繁殖地域であり、絶滅の危機に瀕した同種の復活の希望となっています。

オークランド諸島は、その地理的な位置、歴史、そして独特な生態系から、非常に重要な場所です。世界遺産としての保護を通じて、この貴重な自然が未来に引き継がれることが期待されます。

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