オーストラリア (重巡洋艦)

オーストラリア海軍重巡洋艦『オーストラリア』：建造から終焉まで

オーストラリア海軍の重巡洋艦『オーストラリア』(HMAS Australia, I84/D84/C01)は、イギリス海軍の1924年度海軍整備計画に基づき発注されたケント級重巡洋艦の一隻です。艦名は、第一次世界大戦で活躍した同名巡洋戦艦に続く2代目となります。ケント級は、艦隊決戦よりも単艦での海外任務を重視した設計となっており、条約排水量内で最小限の兵装と防御力に抑えることで、優れた航続距離、高い凌波性、そして居住性を両立させていました。

艦形と基本設計

『オーストラリア』は、基準排水量9,700トン級の乾舷の高い平甲板型船体を持ち、凌波性を高めるため艦首には2段のフレアが施されていました。艦首甲板には20.3cm連装砲塔が2基背負い式に配置され、2番主砲塔から上部構造物が開始します。箱型の操舵艦橋と後方に傾斜した前部マスト、そして等間隔に配置された3本の煙突（2番煙突は太い）が特徴的でした。煙突周囲は艦載艇置き場となっており、ボート・ダビッドが6組装備されていました。後部マストと後部見張所、4番主砲塔は上部構造物の後方に配置され、舷側には復元性と水雷防御のためのバルジが装着されていました。

艦載機としてはシーガル水上機が搭載され、1935年9月からはカタパルトが設置されました。1936年にはウォーラス水上機に換装され、オーストラリア空軍の共同運用部隊によって運用されました。カタパルトと艦載機は1944年10月に撤去されています。

兵装と近代化改装

『オーストラリア』は、当初機関部と弾薬庫を覆う装甲甲板のみが主要な防御手段でした。砲塔と司令塔にも装甲が施されていましたが、1938年から1939年にかけて、最大110mm厚の装甲帯が喫水線に沿って追加され、機関部の防御が強化されました。

対空火器も近代化改装により変化しました。1935年から1939年にかけて行われた改装では、40mmポンポン砲4基が追加され、4.7cm速射砲は撤去されました。さらに、1940年には286型レーダーが搭載され、10.2cm高角砲が単装から連装に換装されました。533mm四連装魚雷発射管は撤去されました。1942年には40mmポンポン砲が八連装に換装され、エリコン20mm機関砲も追加されました。1944年には航空施設を撤去し、対空火器を強化しました。20.3cm主砲塔1基を撤去し、40mm八連装ポンポン砲2基、ボフォース40mm機関砲も増設されました。

艦歴

『オーストラリア』は、ワシントン海軍軍縮条約により同名の巡洋戦艦が自沈処分となった後、オーストラリア政府の要求で建造されました。1925年8月にスコットランドのジョン・ブラウン社で起工され、1927年3月に進水、1928年4月24日に就役しました。建造費は約190万ポンドでした。海上公試中の排煙問題により、煙突は延長されています。

戦前の活動

就役後、『オーストラリア』はオーストラリアへ向かい、航海中にカナダやアメリカなどを訪問しました。世界恐慌後はオーストラリア海軍の主力艦として活動し、太平洋やニュージーランドを巡航しました。1934年にはイギリスに派遣され、地中海艦隊に配属されました。アビシニア危機時には、イタリアとの戦争に備え訓練を行いました。1936年には帰国し、その後もオーストラリア近海で活動しました。

第二次世界大戦

第二次世界大戦勃発後は、当初近海哨戒に従事し、後にインド洋でドイツ艦捜索や船団護衛に従事しました。ダカール攻撃ではフランス海軍艦艇と交戦し、損傷を受けました。イギリスへの兵員輸送船団護衛やドイツ艦捜索、その後はインド洋での通商破壊艦捜索に従事しました。1941年には、スエズへ向かう船団護衛やシンガポールへの航海を行い、その後南大西洋で活動しました。

太平洋戦争開戦後は、極東で敗北する連合軍の中で、ANZAC戦隊の旗艦としてニューギニア方面の作戦に参加しました。珊瑚海海戦ではアメリカ機動部隊を支援し、ガダルカナル島やニューギニア島の上陸作戦にも参加しました。1943年には、ソロモン諸島方面作戦を支援中に姉妹艦『キャンベラ』を喪失するなど、激戦を経験しました。レイテ沖海戦では神風特攻を受け、艦長以下多数の戦死傷者を出しました。リンガエン湾侵攻では、複数回に渡り神風特攻を受け、大きな損害を受けました。

戦後

終戦後、『オーストラリア』は1946年に帰還し、予備役となりました。1947年に再就役し、オーストラリア戦隊旗艦として東京湾に派遣された後、練習艦としてオーストラリア近海で活動しました。南極海の任務中に損傷したため、その後は同様の任務への派遣は行われなくなりました。1954年8月31日に解役され、1956年に解体されました。

栄典

『オーストラリア』は第二次世界大戦での戦功により、8個の戦闘名誉章を受章しました。その功績は、オーストラリア海軍の歴史に刻まれたものです。一隻の艦艇の艦歴を通して、オーストラリア海軍、ひいてはオーストラリアの歴史を垣間見ることができるでしょう。

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