オールドバラ

オールドバラ（Aldeburgh）は、イギリスのイースト・アングリア地方、サフォーク州の海岸部に位置する魅力的な街です。オールド川に面し、その美しい礫浜とそこで獲れる新鮮な海の幸で広く知られています。また、国際的な文化イベントであるオールドバラ音楽祭が開催される地としてもその名を知られています。

温暖な季節には多くの人々が訪れ、週末を過ごすための別荘地としても人気が高く、市内の住居の約三分の一がセカンドハウスとして利用されています。街には、現在もなお町議会が開かれている歴史あるムート・ホールや、ナポレオン戦争時代に築かれたマーテロー塔など、見どころが点在しています。

地理

オールドバラは北海に面しており、ロンドンの北東約140キロメートル、州都イプスウィッチからは北東約32キロメートル、そしてロウストフトからは南へ約37キロメートルという位置関係にあります。特徴的なのは、市街地の南側を流れるオールド川が、細長い礫の砂洲である「オーフォード・ネス」によって海への直接の流路を阻まれ、南西に約14キロメートル離れた場所でようやく北海に注ぎ込んでいる点です。

海岸線は小さな丸石から成る礫浜で構成されており、高潮の際には漁船を安全に引き上げられる場所がいくつか設けられています。この浜辺は環境保全に優れているとして、2005年には青旗浜の表彰を受けています。オーフォード・ネスへ向かうには、丸石が転がる土手を南へと進みます。その道のりでは、かつて村があったスローデンの跡地や、そこに建つマーテロー塔、そして二つのヨットクラブを目にすることができます。

オールドバラは、1953年の北海高潮による浸水被害を経験しており、それ以降、高潮対策が強化されてきました。市街地そのものは、イギリスの特別自然景観地域（AONB）に指定されている「サフォークの海岸とヒース」の中にあり、街の周辺には自然保護協会特別指定地区（SSSI）が多く存在し、豊かな自然環境が保全されています。これには、塩沼や干潟の生物が豊富なオールド川の三角江（The Alde-Ore Estuary SSSI）や、ヒースと沼地の野生生物生息域を含むThe Leiston-Aldeburgh SSSIなどが含まれます。

歴史

「古い砦」を意味するオールドバラ（Alde Burgh）という名前の由来となった砦や、テューダー朝時代の街並みの一部は、残念ながら海の浸食によって失われてしまいました。しかし、16世紀にはイングランド有数の港として、造船業が非常に栄えた歴史を持ちます。フランシス・ドレイクが所有したことで知られるガレオン船「ゴールデン・ハインド号」（旧名ペリカン）や「グレイ・ハウンド号」はここで建造されたと言われています。また、北米植民地建設を目指したロンドン会社の旗艦「海の冒険号」も、1608年にオールドバラで造られたと考えられています。

その後、オールド川にシルトが堆積し、大型船の入港が困難になったことで、街は衰退の一途をたどりました。再び活気を取り戻したのは19世紀に入ってからで、海沿いのリゾート地として人気が高まりました。現在オールドバラに見られる特徴的な建物や風変わりな建物は、その多くがこの19世紀に建てられたものです。今日のオールド川は、ヨットクラブやセーリングクラブの活動拠点となっています。街には複数の教会もあり、中には宗教改革以前から存在する歴史ある教会も含まれます。

政治史において特筆すべき点として、オールドバラはかつて「腐敗選挙区」として知られていました。1571年から議会に代表を送っていましたが、16世紀以降の人口減少にもかかわらず議席を維持し続けたため、1832年の選挙法改正によって選挙区は廃止されました。また、オールドバラはイギリス全土で初めて女性市長を選出した街でもあります。1908年、イギリス初の女性医師でもあったエリザベス・ギャレット＝アンダースンが市長に就任しました。

名所・旧跡

オールドバラとその周辺には、歴史や文化を感じさせる様々な名所・旧跡があります。

ムート・ホール: 1520年頃に建造された木骨造りの建物で、その後改築や改修を経て、400年以上にわたり町議会の開催場所として使用されています。現在も町役場の書記官オフィスが置かれているほか、地元の博物館としても公開されています。
マーテロー塔: オーフォード・ネスへと続く地峡部に位置する、四葉のクローバーのような独特な形状の塔です。1808年から1812年にかけてナポレオン軍の侵攻に備えて建設された防御塔群の中で、最大かつ最北端にあたります。ボランティアによって管理されており、休日に宿泊することも可能です。この塔は、1936年に水没した漁村スローデンで唯一現存する建造物であり、近くにはかつて利用されていたスマック漁船イオニア号の残骸も確認できます。
グリーンミル砦: 街の南端に立つ4階建ての風車です。1824年に建造され、1902年には住居へと改装されました。
オールドバラ救命艇係留所: 1851年に設立されたサフォーク難破協会に由来する救命艇の係留所です。
タンク・トラップ: スローデン通りの脇には、第二次世界大戦中に設置された対戦車障害物、通称「竜の歯」と呼ばれるタンク・トラップの一部を見ることができます。
帆立貝の彫刻 (The Scallop): オールドバラの中心部から少し北に離れた浜辺に立つ、ステンレス鋼製の高さ4.6メートルの巨大な彫刻です。地元サフォーク出身の芸術家マギー・ハンブリングによって2003年に制作され、この浜辺を散策することを愛した作曲家ベンジャミン・ブリテンに捧げられました。割れた二つの帆立貝の形をしており、片方にはブリテンのオペラ『ピーター・グライムズ』からの引用「I hear those voices that will not be drowned」（溺れることのない声が聞こえる）という言葉が刻み込まれています。この彫刻は浜辺の新たなランドマークとなりましたが、その設置を巡っては景観を損なうとする反対意見もあり、賛否両論を巻き起こしています。

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