カイパーシステムズ

カイパーシステムズ：Amazonが挑む衛星インターネット革命

カイパーシステムズ（Kuiper Systems, LLC）は、Amazonの子会社として2019年に設立されました。プロジェクト・カイパー（Project Kuiper）の名でも知られ、低遅延のブロードバンドインターネット接続を世界中に提供することを目標としています。その壮大な計画と、これまでの歩みを詳しく見ていきましょう。

プロジェクト概要

カイパーシステムの根幹をなすのは、地球低軌道（LEO）に配置される3,236基の衛星群です。この衛星コンステレーションは、世界中の人々が高速インターネットにアクセスできるように設計されています。

プロジェクトの名前「カイパー」は、太陽系外縁部のカイパーベルトに由来します。

認可と義務

アメリカ連邦通信委員会（FCC）は、Amazonに対し3,236基の衛星を低軌道に配備する許可を与えました。

この認可には、以下の義務が含まれています。

2026年7月30日までに、衛星の50％を打ち上げ、運用開始
2029年7月30日までに、残りの衛星をすべて打ち上げ、運用開始

衛星の打ち上げは、5つの段階に分けて計画されています。
最初の578基の衛星が稼働すれば、インターネットサービスの提供が開始される予定です。

打ち上げ契約

Amazonは、衛星の打ち上げのために、複数のロケット打ち上げ企業と契約を結んでいます。

その総額は100億米ドルを超え、打ち上げ回数は92回に及びます。

ユナイテッド・ローンチ・アライアンス（ULA）
アリアングループ
ブルーオリジン

2024年には、スペースXのファルコン9ロケットでの打ち上げも契約に加わりました。

歴史

2019年4月：Amazonがプロジェクト・カイパーを発表。ブロードバンドインターネットへのアクセスがない数千万人にサービスを提供するため、最大10年かけて衛星コンステレーションを構築する計画を明らかにしました。

2019年12月：AmazonがFCCに対し、スペースXやワンウェブが大規模衛星インターネットの免許を取得する際に必要だった要件の免除を申請したことが報道されました。

2020年7月：Amazonがプロジェクト・カイパーに100億米ドル以上を投資することを発表。FCCから3,236基の衛星群の認可を取得しました。

2020年12月：低コストのフラットパネルアンテナの概要を発表。従来のアンテナよりも小型で、より高速なデータ通信を実現する設計です。

2021年4月：ULAと9機のカイパー衛星打ち上げ契約を締結。他の打ち上げ手段も検討を続けるとしました。

2022年4月：今後10年間で83回の打ち上げを行う契約を、複数の打ち上げ企業と締結しました。これには、アリアン6、ニューグレン、バルカンロケットが含まれています。

2023年8月：株主が、打ち上げ契約における不誠実な行為があったとしてAmazonを提訴。ジェフ・ベゾスとイーロン・マスクの対立が、Amazonの打ち上げ契約に影響を与えている可能性を示唆しています。

2023年10月：最初のプロトタイプ衛星「KuiperSat-1」「KuiperSat-2」が、ULAのアトラスVロケットで打ち上げられました。

プロトタイプ衛星打ち上げ後

プロトタイプ衛星は、打ち上げ後に名目上稼働していると報告されました。

2023年11月：NTTグループ4社が、日本国内でのカイパーサービス提供に向け、Amazonと戦略的協業を開始しました。

2023年12月：スペースXのファルコン9ロケットで、3回の打ち上げ契約が締結されました。

2024年1月：バルカン・ケンタウルス・ロケットが初打ち上げに成功し、今後のカイパー衛星の打ち上げへの道が開かれました。

2024年4月：アリアン6初号機の中央コアが、発射台に移動しました。

2024年5月：ULAが、バルカンロケットを輸送する2隻目の船を契約しました。

2024年6月：Amazonが、南米でのデジタルデバイド解消を目指し、DirectTV Latin Americaと提携しました。

技術

衛星コンステレーション

カイパーの衛星コンステレーションは、以下の特徴を持っています。

軌道高度：590km、610km、630kmの3つの軌道シェル
軌道面：98軌道面
衛星数：3,236機
推進技術：ホール効果スラスター

第一段階の展開では、578機の衛星が高度630km、軌道傾斜角51.9度で運用される予定です。

また、衛星は光赤外線レーザー接続（OISL）を介して相互接続されます。これにより、最大2,600km離れた衛星間で100Gbpsのデータ通信が可能になります。

顧客端末

複数の顧客端末の設計が計画されており、さまざまな市場ニーズに対応します。

標準端末：11インチ四方、厚さ1インチ以下、重さ5ポンド以下。最大400Mbpsの通信速度
超小型端末：7インチ四方、重さ1ポンド。最大100Mbpsの通信速度。住宅やIoT向け
高帯域幅端末：19インチ×30インチ。最大1Gbpsの通信速度。企業や政府機関向け

Amazonは、これらの端末を低価格で提供する予定です。

地上施設

カイパーの地上局は、AWS地上局ユニットと連携して運用されます。ワシントン州のレドモンドに本部を置き、カークランドには衛星製造施設、エベレットには物流センターがあります。

フロリダ州のNASAケネディ宇宙センターには、衛星処理・統合施設が建設されています。

打ち上げ履歴

* 2023年10月6日：プロトタイプ衛星「KuiperSat-1」「KuiperSat-2」を、ULAのアトラスVロケットで打ち上げ。

まとめ

カイパーシステムズは、Amazonの技術力と資金力を結集し、衛星インターネットの分野で大きな変革をもたらそうとしています。その計画は壮大で、多くの人々の生活に影響を与える可能性を秘めています。今後の展開から目が離せません。

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