カウシャーンビー

カウシャーンビー

カウシャーンビー（Kauśāmbī）は、古代インドに存在した都市であり、かつては十六大国の一つであるヴァツサ国の首都でした。現在のウッタル・プラデーシュ州に位置するこの街は、仏教にとっても重要な場所で、ウダヤナ王の時代には仏陀も訪れたとされています。パーリ語ではコーサンビー（Kosambī）と呼ばれ、古文献においては「拘睒弥」や「憍賞弥」とも表記されています。

位置と考古学的発見

カウシャーンビーの正確な位置については長い間論争が続いていました。玄奘の『大唐西域記』によると、プラヤーガ（現在のイラーハーバード）から西南へ500里の地点にあるとされていました。また、『大慈恩寺三蔵法師伝』では、プラヤーガから7日かかると記述されています。しかし、実際のカウシャーンビーはイラーハーバードの南西約70キロメートルのヤムナー川北岸に位置していたことが明らかになっています。1861年にアレキサンダー・カニンガムがヤムナー川北岸をカウシャーンビーと同定し、1940年代から1950年代にかけて行われたG.R.シャルマ率いるイラーハーバード大学の調査によって、多くの遺物が発見されたことで、この位置特定の正当性が証明されました。

歴史背景

カウシャーンビーの遺構からは最古の城壁が紀元前7世紀まで遡ると考えられていますが、6世紀にはエフタルの侵略によって破壊されたという記録もあります。プラーナ文献では、クル国のジャナメージャヤ王の時代に、ハスティナープラが洪水によって被害を受けたため、カウシャーンビーに遷都されたという説が伝わっています。しかし、地理的に二つの都市はかなり離れていたため、議論があります。

ウダヤナ王の時代、カウシャーンビーは交通の要所として栄え、多くの商業活動が行われました。ここでは、裕福な商人であるゴーシタ、クックタ、パーヴァーリカの三人が安居の施設を設け、仏陀を招いたという仏教に関する記述もあり、重要な宗教的中心地であったことが示されています。

さらに、現在イラーハーバードにあるアショーカ王の石柱は、元々カウシャーンビーに設置されていたとされ、その碑文にはサンガを分裂させる者に対する罰に関する内容が記されています。また、玄奘はこの地でウダヤナ王によって刻まれたとされる栴檀の仏像を目にしたと言われており、さらにゴーシタの家の跡についても言及されています。このように、カウシャーンビーは仏教発展においても重要な拠点であったことが特徴です。

結論

カウシャーンビーは、古代インドにおける交通、商業、宗教の重要な中心地であり、数々の歴史的遺物が発見されることでその存在が再評価されています。その位置と役割は、古代インドの文化と歴史を理解する上で欠かせない要素となっています。

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