カスペの妥協

カスペの妥協：アラゴン王位継承の転換点

カスペの妥協（Compromiso de Caspe）は、1412年にアラゴン連合王国の構成国であるアラゴン王国、カタルーニャ君主国、バレンシア王国の代表者がカスペに集まり、マルティン1世の死によって空位となった王位の後継者を決定した歴史的な合意です。この合意によって、カスティーリャ王国の王子であったトラスタマラ家のフェルナンド1世が新たな国王として迎えられることになりました。

王位継承問題の背景

当時のアラゴン連合王国には、明確な王位継承法が存在せず、慣習に基づいて後継者が決定されていました。過去の事例では、男系相続が優先される傾向にありましたが、11世紀にはペトロニラ女王が即位した例もあり、絶対的なルールはありませんでした。

マルティン1世の死後、複数の有力な王位候補者が浮上しました。

ルナ伯ファドリケ: マルティン1世の庶子であり、教皇ベネディクトゥス13世の支持を受けていました。
ウルジェイ伯ジャウマ2世: アルフォンソ4世の男系曾孫であり、マルティン1世から厚遇されていましたが、その専制的な政治姿勢が警戒されていました。
ガンディア公アルフォンソ1世: ハイメ2世の男系孫であり、血統的には最上位でしたが、高齢のため決定前に死去しました。
ルイ3世・ダンジュー: フアン1世の王女ヨランドを母に持ち、マルティン1世の甥にあたります。
* フェルナンド・デ・アンテケラ: カスティーリャ王子であり、マルティン1世の妹を母に持ち、強固な後ろ盾がありました。

合意への道のり

各国代表者たちはカスペに集まり、各候補者の正当性を吟味しました。代表者には、ウエスカ司教ドメネク・ラム、タラゴナ大司教ペレ・デ・サガーリガ、ポルタセリ修道院長ボニファシ・フェレール、ドミニコ会派聖職者ビセンテ・フェレールらが名を連ねました。1412年6月28日、投票の結果、フェルナンド・デ・アンテケラがフェルナンド1世として即位することが決定しました。

カスペの妥協の影響

アラゴン連合王国の各国は、外国人の王を迎えることになりましたが、それは、選ばれた王であれば各国の自治制度を尊重するだろうという期待があったためです。しかし、この期待はフェルナンド1世の後継者たちによって裏切られることになります。

カスペの妥協後、王位を逃したウルジェイ伯ジャウマ2世は反乱を起こしましたが鎮圧され、バルセロナ家の正嫡男系男子は絶えました。また、シチリア王国もフェルナンド1世を王として承認しました。

その後も、カタルーニャ内乱やナポリ王位を巡る争いなど、様々な問題が発生しましたが、1479年にフェルナンド2世がアラゴン王位を継承し、妻イサベル1世とともにカスティーリャ王位に就いたことで、アラゴン連合王国とカスティーリャ王国が統合され、スペイン王国へと発展していくことになります。

カスペの妥協は、アラゴン連合王国の歴史における重要な転換点であり、その後のスペインの歴史に大きな影響を与えた出来事と言えるでしょう。

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