カチューシャ・アルペシン

カチューシャ・アルペシン：栄光と波乱に満ちた軌跡

カチューシャ・アルペシン（Team Katusha-Alpecin）は、2007年にイタリアを拠点として誕生したティンコフ・クレジットシステム・プロフェッショナルサイクリングチームが前身となり、2019年まで活動した自転車ロードレースのUCIワールドチームです。

チームの誕生と躍進

2009年、ロシアの大企業3社（ガスプロム、イテラ、ロステフノロジー）がスポンサーとなり、チームは新たなスタートを切りました。推定1500万ユーロという潤沢な資金を投入し、ロビー・マキュアンやフィリッポ・ポッツァートといった一流選手、ウラディミール・カルペツやセルゲイ・イワノフなどロシアの有力選手を多数獲得。デビュー戦となったツアー・ダウンアンダー前日のダウンアンダー・クラシックでは、マキュアンが優勝を飾るなど、華々しいスタートを切りました。

春のクラシックレースでも、イワノフがアムステルゴールドレースで優勝、ポッツァートがパリ〜ルーベで2位に入るなど、チームは目覚ましい活躍を見せました。

相次ぐドーピング問題と苦難

しかし、順風満帆とはいきませんでした。2009年5月にはクリスティアン・ファンベルガー、6月にはアントニオ・コロムと、所属選手のドーピングが相次いで発覚。ツール・ド・フランスの出場メンバーを大幅に変更せざるを得なくなるなど、チームは大きな混乱に見舞われました。さらに、新たに契約に追加した「ドーピングが発覚した場合、年俸の5倍の罰金を科す」という条項へのサインを拒否したヘルト・ステーフマンスなど、一部選手との契約を解除するなど、チームは苦境に立たされました。

このような状況で出場したツール・ド・フランスでは、イワノフがステージ1勝を挙げましたが、ドーピングを咎められる形でブエルタ・ア・エスパーニャは、UCIプロチーム中唯一除外されるという屈辱も味わいました。

ロドリゲスの活躍とチームの再起

2010年には、新加入のホアキン・ロドリゲスがカタルーニャ一周で総合優勝を飾ると、ツール・ド・フランスではステージ1勝・総合8位、ブエルタ・ア・エスパーニャでもステージ1勝・総合4位に入るなど、年間を通して大活躍。UCIワールドランキングチャンピオンに輝きました。また、ジロ・デ・イタリアでは、エフゲニー・ペトロフとポッツァートが2日連続でステージ優勝を挙げるなど、チームは再び勢いを取り戻しました。

2012年には、ロドリゲスがジロ・デ・イタリアで総合ポイント賞を獲得、ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ3勝を挙げるなど、エースとしてチームを牽引。自身も年間UCIワールドランキングチャンピオンに輝き、チームもUCIワールドツアーで2位につけるなど、再びトップチームとしての地位を確立しました。

しかし、シーズン終了後、チームはUCIワールドツアーのライセンスを剥奪されてしまいます。チームはスポーツ仲裁裁判所(CAS)に訴え、2013年2月15日、CASがカチューシャのライセンスを認める裁定を下し、チーム・カチューシャは2013年におけるUCIワールドツアーのライセンスを得ることに成功しました。

カチューシャ・アルペシンとしての活動と解散

2016年、アルペシン社がスポンサーとして参加し、チームはカチューシャ・アルペシンとして新たなスタートを切ります。チームの本拠地はスイスへと移されました。

しかし、2020年、イスラエル・スタートアップ・ネイションにUCIワールドライセンスを譲渡。チームは解散し、既存のチームメンバーやチーム役員は吸収又は他のチームなどに移籍しました。

主な戦績

カチューシャ・アルペシンは、数々のレースで輝かしい成績を残しました。

2017年：ツール・ド・スイス 総合優勝（シモン・シュピラック）、ドイツ選手権 優勝（トニー・マルティン）、ロードレース・ヨーロッパ選手権 優勝（アレクサンダー・クリストフ）
2018年：ティレーノ〜アドリアティコ 区間優勝（マルセル・キッテル）、ドイツ選手権 優勝（トニー・マルティン）
* 2019年：ジロ・デ・イタリア 区間優勝（イルヌール・ザカリン）

まとめ

カチューシャ・アルペシンは、豊富な資金力で有力選手を集め、数々の勝利を挙げた名門チームでした。しかし、ドーピング問題やライセンス剥奪など、苦難の歴史も経験しました。2019年に解散しましたが、その功績はロードレース史に深く刻まれています。

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