カチン州

カチン州：ミャンマー北部の多様性と歴史が交錯する地

カチン州は、ミャンマーの最北に位置し、中国やインドと国境を接する地域です。その地理的な特性から、多様な民族が共存し、独自の文化を育んできました。しかし、その歴史は紛争と独立運動の歴史でもあります。

歴史

1947年のパンロン協定は、カチン族を含む少数民族の自治を認める画期的なものでした。この協定に基づき、1948年にカチン州が成立しました。しかし、広大な山間部にはカチン族が、鉄道沿線や南部渓谷にはシャン族やビルマ族が居住するという民族分布の違いが存在しました。また、カチン産の翡翠は中国で珍重され、重要な交易品となっていましたが、国境問題も抱えていました。

1962年のネ・ウィン政権による憲法停止後、カチン族はカチン独立機構(KIO)とカチン独立軍(KIA)を組織し、独立闘争を開始します。1960年代から1994年まで、カチン州は事実上独立状態となり、経済は密輸や翡翠貿易、麻薬に依存していました。1994年にミャンマー軍が翡翠鉱山を制圧し、平和条約が締結されましたが、その後も分派の形成や政情不安が続いています。

2011年には、KIAとミャンマー軍の武力衝突が再開し、多くの国内避難民が発生しました。2013年には再び停戦合意がなされましたが、根本的な解決には至っていません。

地理

カチン州は、シャン州、ザガイン地方域、中国、インドと国境を接しています。エーヤワディー川やチンドウィン川が流れ、山岳地帯が広がります。特に、カチン州最北部のカカボラジ山は、ミャンマー最高峰であり、東南アジア最高峰でもあります。

行政区画

カチン州は、バーモ県、ミッチーナー県、プーターオ県、モーニイン県の4県を管轄しています。

バーモ県
ミッチーナー県
プーターオ県
モーニイン県

産業

伝統的なカチン族の社会は、焼畑農業に依存しています。フーコン渓谷ではコハクや金の採掘が行われ、「ゴールド・ラッシュ」と呼ばれる状況になっています。パーカンでは、ヒスイの採掘が盛んですが、2020年には大規模な地滑りが発生し、多数の死者を出す惨事となりました。

政治

伝統的なカチン族の政治は、族長を中心としたものでした。しかし、現代においては、カチン独立機構(KIO)などの組織が大きな影響力を持っています。

宗教

伝統的な宗教はアニミズムでしたが、現在ではキリスト教徒が多数を占めています。

結婚

カチン族には、母方いとこ婚の習慣があります。

カチン州は、その複雑な歴史と多様な文化を持つ地域です。紛争の絶えない状況ではありますが、平和な未来を築くための努力が続けられています。

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