カヤツリグサ

カヤツリグサ(蚊帳吊草)について



カヤツリグサ(学名: Cyperus microiria)は、カヤツリグサ科カヤツリグサ属に分類される一年生植物です。日本においては、道端や田畑など、ごく身近な場所で見られる雑草として知られています。また、別名としてマスクサ(枡草)とも呼ばれています。

特徴



カヤツリグサは、草丈が30cmから50cm程度に成長します。全体的に緑色でつやがあり、根元には少数の細長いが生えています。は直立し、節がなく、枝分かれせずに真っ直ぐ伸びます。の断面は三角形をしているのが特徴です。の先端には花序が形成されます。

花序の基部には、のような形をしたが数枚ついており、そのうちのいくつかは花序よりも長くなっています。根元のが少ないため、全体として頭でっかちな印象を受けます。

小穂は平たくて細長く、多少褐色を帯びています。小穂は小軸からやや大きい角度で突き出し、それがブラシのように並んでいます。このような小穂の先端から伸びた柄の先に複数ついて、花序を形成します。の先端に直接つく穂もあります。

花は小穂鱗片の中に隠れるように咲き、雌しべを雄しべが囲むというシンプルな構造です。雌しべが成熟して果実になると、鱗片と共に脱落します。果実は褐色でつやがあり、断面は三角形です。

カヤツリグサのを折ると、柑橘系の香りがすることが特徴です。

分布



カヤツリグサは、本州から九州にかけて広く分布しており、ごく普通に見られます。ただし、琉球列島には分布しておらず、過去の記録は近縁のチャガヤツリとされています。国外では、朝鮮半島や中国にも分布しています。近縁のコゴメガヤツリと比較すると、分布範囲は狭いと言えます。

人間との関わり



カヤツリグサという名前は、「蚊帳吊り草」に由来します。これは、かつて子供たちがこの植物を引き裂いて、蚊帳のような四角形を作って遊んだことに由来します。

一方で、カヤツリグサは水田や畑地においては、ごくありふれた雑草として認識されており、特に日本の畑地では、被害の大きい雑草の一つとされています。見た目がよく似たコゴメガヤツリも同様に雑草としてよく見られますが、両者の性質には若干の違いがあります。

近縁種



カヤツリグサ属には、日本国内に約40種が存在し、雑種も含めるとさらに多くの種類があります。これらの多くは湿地に生育し、大型種から小型種まで、さまざまなサイズのものが見られます。同定には、鱗片の形、果実の形、柱頭の数などを詳しく観察する必要があります。

カヤツリグサと特に似ている近縁種としては、以下のものがあります。

チャガヤツリ (Cyperus amuricus):
カヤツリグサと非常によく似ていますが、花序がより単純であること、鱗片が反り返ることで区別できます。

コゴメガヤツリ (Cyperus iria):
水田に多く見られます。小穂が小軸に寄り添うこと、鱗片の先端が丸いことで区別できます。

その他のよく見られる種としては、以下のようなものがあります。

ハマスゲ (Cyperus rotundus):
乾燥した草原田畑に生え、赤褐色の細い小穂をつけます。
イヌクグ (Cyperus cyperoides):
乾燥した草原田畑に生え、小穂は円筒形で花が少ないです。
クグガヤツリ (Cyperus compressus):
乾燥した草原田畑に生え、草丈が低く、楕円形の偏平な小穂をつけます。
アゼガヤツリ (Cyperus flavidus):
水田に見られ、地下茎が横に這い、小穂は褐色で細長く、掌状につきます。
タマガヤツリ (Cyperus difformis):
水田に見られ、細かい小穂が丸いぼんぼり状に生じます。
ヒナガヤツリ (Cyperus flaccidus):
水田に見られ、草丈が低く、小判状の小穂を掌状につけます。



参考文献



牧野富太郎『牧野日本植物図鑑』(改訂版)北隆館、1951年。
佐竹義輔ほか編『日本の野生植物 草本1 単子類』平凡社、1982年。
北村四郎ほか『原色日本植物図鑑 草本編3 単子類』保育社保育社の原色図鑑〉、1981年。
平野隆久写真『野に咲く花』林弥栄監修、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、1989年、472頁。ISBN 4-635-07001-8。
初島住彦『琉球植物誌(追加・訂正版)』,(1975),沖縄生物教育研究会
M.A. Chizon、中川恭二郎、(1988)、カヤツリグサ科1年草雑草コゴメガヤツリ・カヤツリグサの個生態学的研究、Weed Research,Japan Vol.33,p.23-30


関連項目



草の一覧
水田雑草
蚊帳

外部リンク



Cyperus microiria Steud - Integrated Taxonomic Information System (英語)
Cyperus microiria Steud. - Encyclopedia of Life (英語)
波田善夫. “カヤツリグサ”. 植物雑学事典. 岡山理科大学.

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