カントリー牧場

カントリー牧場：北海道が生んだ名門サラブレッド生産牧場の軌跡

1963年から2012年まで、北海道新ひだか町にその名を轟かせたカントリー牧場。サラブレッド競走馬の生産牧場として、日本の競馬史に燦然と輝く足跡を残しました。

谷水式ハードトレーニングと黄金時代

実業家・谷水信夫氏によって創業されたカントリー牧場は、当初から革新的な育成方針を採っていました。それは、競走馬に並々ならぬ厳しいトレーニングを課す「谷水式ハードトレーニング」です。毎日数千メートルにも及ぶ調教は、時に馬の命を奪うほどの過酷さだったと言われています。しかし、この徹底した鍛錬は、驚くべき成果を生み出しました。

1960年代後半から1970年代前半にかけて、カントリー牧場はマーチス、タニノハローモア、タニノムーティエなど、数々の八大競走優勝馬を輩出。特にタニノムーティエの皐月賞・日本ダービー連覇は、牧場の黄金時代を象徴する出来事でした。 この成功は、谷水氏の並々ならぬ情熱と、牧場スタッフの献身的な努力の賜物でした。 当時の育成方法は、業界に衝撃を与え、「谷水式ハードトレーニング」として広く知られるようになりました。 その過酷さゆえに、馬の損失もあったものの、結果として強靭な競走馬を育成することに成功したのです。

低迷期と再生への道

1972年、谷水信夫氏の急逝後、経営は息子の谷水雄三氏に引き継がれました。しかし、雄三氏はゴルフ場経営との両立に苦しみ、牧場の成績は一時的に低迷。 無計画な繁殖牝馬の増加は、牧場の土壌を痩せさせ、育成環境の悪化を招いたと言われています。 血統の偏りも問題となり、牧場はかつての輝きを失いかけました。

しかし、雄三氏は関係者からの助言を受け、土壌改良や繁殖牝馬の数を制限するなど、牧場経営の抜本的な改革に着手。 地道な努力が実り、1991年には繁殖専用の分場も設置されました。 この改革は、カントリー牧場の再生への重要な一歩となりました。

再び頂点へ：新たな黄金時代

2000年代に入ると、カントリー牧場は再びその底力を発揮します。タニノギムレット、そして、その娘であるウオッカの活躍は、日本の競馬界を席巻しました。ウオッカは、牝馬として64年ぶりとなる日本ダービー制覇を達成。その後も数々のGI競走を制覇し、2年連続の年度代表馬に輝きました。 さらにビッグウィークの菊花賞制覇により、カントリー牧場はクラシック三冠競走完全制覇という偉業を達成しました。ウオッカは、2011年にはJRA顕彰馬にも選出され、その偉大な功績は後世に語り継がれることでしょう。

幕引きと遺産

ウオッカの引退を機に、高齢となった谷水雄三氏は、2012年にカントリー牧場の解散を発表しました。 長年にわたるオーナーブリーダーとしての活動に幕を閉じ、所有馬は他の牧場へ売却されました。 しかし、カントリー牧場が日本の競馬界に残した功績は、多くの名馬と、その育成に情熱を注いだ人々の記憶として、永遠に語り継がれていくことでしょう。 厳しいトレーニングと血統管理、そして、時代を超えて受け継がれた情熱。カントリー牧場の物語は、日本のサラブレッド生産の歴史における重要な一章を飾っています。

主要生産馬

カントリー牧場からは、マーチス、タニノハローモア、タニノムーティエ、タニノチカラ、タニノギムレット、ウオッカ、ビッグウィークなど、数多くのGI級競走馬が輩出されました。これらの馬たちは、日本の競馬史に名を残す名馬として、長く記憶されるでしょう。 その活躍は、カントリー牧場の育成技術の高さを証明するものです。

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