カールトン・ハウス・テラス

カールトン・ハウス・テラス：ロンドンの歴史と威厳を語る白い邸宅群

カールトン・ハウス・テラスは、イギリス・ロンドン中心部のシティ・オブ・ウェストミンスター、セント・ジェームズ地区に建つ、風格ある白い邸宅群です。南側にはセント・ジェームズ・パークが広がり、その美しい景観と相まって、独特の雰囲気を醸し出しています。

歴史：王室庭園から風格あるテラスへ

この地は、かつてはセント・ジェームズ宮殿の敷地の一部であり、「王立公園」や「原野」と呼ばれていました。その後、幾多の所有者を経て、18世紀には「カールトン・ハウス」と呼ばれる邸宅が建ち、摂政王太子ジョージ（後のジョージ4世）の住まいとして知られるようになりました。

しかし、ジョージ4世がバッキンガム宮殿に移った後、カールトン・ハウスは解体されることになります。その跡地に、1827年から1832年にかけて、現在のカールトン・ハウス・テラスが建設されました。建築家ジョン・ナッシュを筆頭に、デキムス・バートンなど多くの建築家が設計と建設に関わり、その洗練されたデザインは高く評価されています。

ナッシュは、セント・ジェームズ・パークと調和するよう、建物の配置やファサードを丁寧に設計しました。コリント式やドーリア式の柱、精巧な装飾など、古典的なスタイルを取り入れながらも、公園の景観を最大限に活かした設計となっています。

当初の計画では、公園に面して3棟のテラスが建設される予定でしたが、実際には2棟が建設され、それぞれ西棟と東棟として知られています。ナッシュは、2棟を大きな噴水で繋ぐ計画を立てていましたが、ジョージ4世によって却下されたため、現在はその場所にヨーク公の階段と記念柱が建っています。

建物の特徴：洗練されたデザインと歴史的価値

カールトン・ハウス・テラスは地上4階建てで、白い化粧しっくい塗りのファサードが特徴です。コリント式柱が並ぶ壮麗な外観は、ロンドンの街並みに風格を与えています。また、建物の内部は、地下2階を含む広々とした空間となっており、かつては王室や貴族たちが居住していました。

建築史家の中には、ナッシュのデザインがパリのコンコルド広場の建築物から影響を受けていると指摘する者もいます。しかし、そのデザインの完成度の高さは広く認められており、イギリス指定建造物グレードIに指定されていることからも、その歴史的価値の高さがわかります。

20世紀以降：再開発の危機と現在の姿

20世紀に入ると、カールトン・ハウス・テラスは、多くのカントリーハウスと同様に、解体と再開発の危機に瀕しました。しかし、関係者の尽力により、その歴史的価値が認められ、保存されることとなりました。

第二次世界大戦中の空襲による被害を受けたものの、修復を経て、現在も多くの組織や個人が入居しています。王立協会、イギリス学士院、数々の学会や企業、そして個人所有の邸宅など、様々な用途に利用されています。

著名な居住者：歴史に名を残す人々の足跡

カールトン・ハウス・テラスには、数々の著名人が居住していました。イギリス首相を務めたパーマストン卿やグラッドストン、インド総督を務めたカーゾン卿、そして駐英ドイツ大使を務めたリッベントロップなど、歴史に名を残す人々が、この地で生活を送っていました。

その中には、MI6の諜報活動拠点や、外交官のスパイ容疑者収容施設としての利用も含まれていました。こうした歴史的な側面も、カールトン・ハウス・テラスを語る上で重要な要素です。

カールトン・ガーデン：テラスと一体となった袋小路

カールトン・ハウス・テラスの西端には、カールトン・ガーデンと呼ばれる袋小路があります。そこには7軒の邸宅が建ち、英国赤十字社の創始者であるウォンテージ男爵や、自由フランスの初代首相シャルル・ド・ゴールなどが居住していました。現在も一部は政府機関として使用され、他はオフィスとして利用されています。

まとめ：ロンドンの歴史と未来を繋ぐ場所

カールトン・ハウス・テラスは、単なる集合住宅ではなく、イギリスの歴史と文化を語る上で重要な場所です。王室の歴史、著名な人物の足跡、そして建築史上の傑作としての価値を併せ持つ、ロンドンの象徴的な存在と言えるでしょう。その美しい外観と歴史的な重みは、これからも多くの人々を魅了し続けることでしょう。

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